エターナル・フロンティア~前編~
流石、多くの者達が尊敬の念を抱いている人物の言葉。部下達は一斉にそれぞれの持ち場に戻り、自分の仕事をこなしていく。誰もが胸に抱いている野望は同じ。そう、自身の将来を夢見て――
素早い動きに、ユアンは心の中で苦笑する。だが、真面目に仕事を行なうのはいいことだ。言葉だけの無能より、多少の問題を抱えている有能な人物の方が使い勝手がいい。勿論、部下達の欠点と一人一人知っている。だからこそその者に会った言葉を掛け、操縦していく。
それが、彼のやり方。
ふと、先程の子犬の存在が脳裏に過ぎる。ユアンは動物を自宅で飼育するタイプではないが、動物自体が嫌いというわけではない。どちらかといえば好きであり、行方が気になってくる。
(捜す。いや……)
其処まで執着心を持ってはいないが、子犬は誰かの世話がなければ簡単に死んでしまう。それにこの施設の中で子犬が死体で発見されたら、気分的にいいものではない。しかし、脚が動かない。
(まあ、嫌われたし)
理由を見付け、子犬を見捨てる方向を探す。このような場合も、自分にとって有利に働くものそうでない物を選んでしまう。見方によっては悪い性格だが、これによって今の地位を得たので簡単に変えられるものではない。
まあ、いいか。
最終的に出した答えは、このようなもの。
一度答えを出してしまうと、後は完全に冷め切ってしまう。彼の割り切り方は早く、躊躇いがない。
誰か深い愛情を持った者が拾い、自宅で育ててくれるだろう。所詮は、他人任せに近かった。
(さて)
数分まで思考の大半を占めていた子犬の情報は消え、次に湧き上がってきたのは仕事のこと。彼は凝り固まった肩を解すように両方の肩をそれぞれ揉むと、自身が普段使用している椅子に腰掛ける。
そしてキーボードを叩き、黙々と仕事を進めていった。途中、数人の部下達がユアンのもとに来てアドバイスを求める。それに対しひとつひとつ丁寧にアドバイスを送るが、彼が感心する内容は少ない。
一通りアドバイスが終わると、止まってしまった自身の仕事を進めていく。今彼が行なっている仕事は、今までやっていた仕事と比べると簡単で楽といっていいもの。だが、手を抜いて行なった場合上から何を言われるかわかったものではない。特に、ユアンを目の敵にしている者は煩い。