エターナル・フロンティア~前編~
ふと、その者達の顔が脳裏を過ぎる。刹那、ユアンは顔を顰め部下達に気付かれないように舌打ちする。あの者達の顔は、精神を著しく痛め付ける。正直、思い出すと気分が悪くなってしまう。
普段、気分が悪くなっても暫く休めば体調も回復するのだが、例の者達が関わると回復に時間が掛かる。ユアンは椅子から腰を上げると、コーヒーを淹れに行き一口含み気分を落ち着かす。
(やはり……)
目障りな存在は、排除するのが一番。害虫も駆除の時を誤れば、甚大な被害を受けてしまう。
被害の対象者は、ユアンだけではない。他の者達も言葉に出さないが、内心ではユアンと同等の意見を持っている者も多い。誰もが「上司が変われば……」と願い、冷たい視線を送る。
誰も文句を言わない。
寧ろ同調する。
所謂、ソラ達を嫌っている感情に似ている。異質な存在や自分にとって都合の悪い者を極力排除し、自分の都合がいい状況を作り出す。一人の力は無力だが、多くの者が集まれば強い力と化す。
人間の裏表を知り尽くしているユアンは、その部分を利用しようとする。複数の者達は隠れ蓑。上に不満を持っている者が一気に声を上げれば、ユアンの存在が表面に出ることはない。
だが、切っ掛けは必要。
そう、ポンっと後押しする何か。
しかし、なかなかいい方法が思い付かない。ユアンは黒い液体に視線を落としつつ、暫し考え込む。
その時、背中から声音が響く。どうやら、再びアドバイスを貰いに来たようだ。部下の言葉にユアンはコーヒーを飲み干すと振り返り、どのようなアドバイスが欲しいのか尋ねつつ自身の席に戻った。
「ああ、これは……」
先程、あのような計画を練っていたとは思えない優しい声音。感情を一瞬にして変化させ、周囲に本音を気付かせない。
だが、無意識の行動は隠し切れない。部下にアドバイスを送る時の彼の目は、鋭さが宿っていた。
アドバイスを終え立ち去る部下の後姿を見た時、面白い計画が思い付く。これにより、徹底的に痛め付け邪魔者を排除することができる。やはり無能が上に立つより、有能な人物が上に立つのが一番だ。それに無能の者が権力に固執するほど、不幸なものはないという。