エターナル・フロンティア~前編~

 床に叩き付けられる子犬。打ち所が悪かったのか、黒い瞳が潤んでいる。動物好きが今の子犬の姿を見たら、すぐに救いの手を差し伸べているだろう。だが、男の非情な部分は続く。

 犬が嫌い。

 過去、男の身に何があったのかわからないが、犬に対して拒絶反応を取る。結果、子犬を叩き落す行動に至った。しかし男が拒絶する理由の一部分は、彼が発した言葉によって理解することができた。

 好き勝手に振る舞い、周囲を汚す。それが当たり前に思っているのか、図々しい。相当嫌悪感を抱いているのだろう、男が発する言葉の全てに毒が含まれ、尚且つトゲも存在していた。

 全身から発せられる残酷なオーラを感じ取ったのか、子犬は逃げるように男の前から立ち去る。

 だが、叩き付けられた影響で身体が痛い。それでも早く男から距離を取りたいのだろう、ふらふらと歩き出す。

 先程の出来事が相当トラウマになってしまったのだろう、人間を避けるように歩くが喉の渇きを潤したいという気持ちが強い。子犬は人気の少ない場所へ向かい恐怖心を抱きつつ、建物の奥へ向かう。

 子犬が向かった先は、一般的に「関係者以外立ち入り禁止」とされている区画。だが、子犬は人間ではないので「立ち入り禁止」と書かれていても、この文字を読むことはできない。

 それどころか、更に奥へ立ち入ってしまう。子犬は、小さい生き物。物陰に隠れては、気付くことはない。その為、子犬は一番奥の部屋の前まで来てしまう。そして、惹かれるように部屋の中に入って行った。

 幸い、この部屋の中には誰もいない。そのことにホッとした子犬は、何処かに飲み物がないか探していく。

 だが、この部屋の中に子犬が求めている物は存在しない。それどころか不規則に機械が並び、独特の音が響き渡る。子犬の以前の飼い主は、機械を使用し研究を行なっていた科学者。

 それにより、このような機械が発する音を聞いたことがあるだろうが、これだけ機械が並ぶ場所に立ち入った経験はない。それが影響してか、独特の音に子犬は身体を震わせてしまう。

 危険な場所。

 本能的にそのように察したのか、子犬は慌てて出口を探す。しかし、なかなか自分が入って来た場所が見付からない。その場で何度も回転を繰り返し、周囲の光景を眺める。すると、自分が入って来た場所を発見する。子犬は其方の方向へ向かって突き進むが、途中床で足を滑らせてしまう。
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