エターナル・フロンティア~前編~
しかし子犬の命を考えると、冷静にならないといけない。それに下手に動けば、相手は何をするかわかったものではない。このような人間は、時に予想外の行動を取る場合があるからだ。ソラは、素直に男の命令に従う。これも、子犬のことを第一に考えての行動だった。
血生臭いパーティーが、本来の内容といっていい。だが、このようなシチュエーションは滅多にない出来事でもある。血生臭い内容に興味がない一部の科学者は、自身の研究の方を優先する。
ソラの力を見る。
その者達は上司の命令に従いつつ、ソラの現在の力の状況に付いてデータを収集していく準備を行なう。
違反――悪い言い方をすれば、この言葉が適切。だが、そもそも彼等が研究しているのは、ソラ達力を持つ人間の生態調査と力の解明。ユアンが言っていたように、このようなことを行ない貴重な存在の命を奪うようなことを行なってはいけない。それも、面白半分で。
「ラドック博士が、直属の上司だったら……」
そう、誰かがそう本音を漏らす。すると、その言葉に釣られる形で数人の科学者が頷き返す。
その全員が、データ収集の準備を行なっている者。日頃、非情な実験を行なっている科学者達でも自身の仕事に誇りと信念を持っている。だから、影でこのように準備を行なっている。
「勝つのは?」
「ソラの方だろう」
「名前で呼ぶんだ」
「いけないか?」
「いや、そういう意味じゃない。普通の科学者は、名前で呼ぶことをしないから……珍しい」
その者が言っているように、ソラを名前で呼ぶ科学者は珍しい。それぞれが独特の呼び方をしており、それで通じている。しかし、ユアンは違う。ソラを名前で呼び、独特の呼び方をしていない。
ソラの名前に付いて指摘した相手に、そのことに付いて指摘する。すると相当痛い部分を突かれたのだろう、相手は咳払いを繰り返す。更にキーボードを打ち間違え、エラーを出してしまう。
その瞬間、周囲に気まずい雰囲気が流れ、打ち間違え人物は渋い表情を作った。だが、へこんでいる暇はない。早く準備を済ませなければ、例の内容がはじまってしまう。