エターナル・フロンティア~前編~

 間違いを取り戻すかのように、素早い動きでキーボードを押していく。結果、ギリギリ間に合った。

 本当の意味での苦労はこれから。今回の主役は、凶暴な生き物。また科学の力で生み出されたとはいえ、感情を持ち合わせている。そして、造られた肉体の中に納められた魂は生への執着を強く見せ、自身を拘束している呪縛が解けた瞬間、周囲の人間に襲い掛かった。

 だが、行動は把握済み。科学者の一人が白衣のポケットから小さい機械の箱を取り出すと、何やら操作をはじめる。

 刹那、苦しい呻き声が響き渡る。科学者が取り出した機械は、自分達が造り出した生き物を制御する物。

 この生き物が手に負えるものではないと、最初からわかっていた。だからこそこのような機械を造り、生き物の体内に埋め込み無理矢理制御をしているのだった。危機一髪の状況に、機械を操作した人物が冷や汗を拭う。あのまま襲われていたら、命を落としていた。鋭い爪は人間の柔な肉体など、簡単に切り裂く。

 引き裂かれた肉体からは血が噴出し、辺りを赤く染めていただろう。想像しただけで背筋が凍り、その場にいた全ての人間が安堵の溜息を付く。

 しかし凶暴な生き物の前での油断は、自分達を危険に晒す。特に相手は肉体を痛め付けられ、苛立っている。また理性が完全にぶっ飛んでしまったのか、前足を振り上げると乱暴に振り回した。

 一人の科学者の頭上を振り回した前足が通り過ぎる。その瞬間、一房の髪が千切れ落ちた。

 完全に腰が抜けたのか、髪を切られた男はその場から動こうとしない。だが、動かなければ死んでしまう。側にいた科学者は慌てて手首を掴むと、自分がいる方向に引き寄せ罵倒する。

「す、すまない」

「逃げるぞ」

「お、おう」

 と言うが、このままの状態にしておくわけにはいかない。状況が悪化したら、多くの被害者を出してしまう。また、今回の対決を楽しみに高い地位に就いている人間達が集まっている。

 彼等を失ったら、主要各所が機能しなくなってしまう。また、このことをマスコミが嗅ぎ付けたら面倒だ。

 殺してしまえば、簡単である。しかし、内心「勿体無い」や「折角生み出したのに」という気持ちが働く。どのような方法を取ればいいか――絶体絶命の状況に置かれている科学者達は懸命に思考を働かせ、考えていく。その時、彼等の前に子犬を盾に取った男が姿を現した。
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