エターナル・フロンティア~前編~
「早く、此方に」
男の言葉に、全員が男の方向へ走って行く。そして全員が男の横を通り過ぎた瞬間、重い音が響き渡る。同時に、鈍い音が続いた。人間と生き物の間に立ち塞がったのは、人工物の壁。これにより人間達の命が奪われることがなくなったが、不安が拭われることはない。
「大丈夫か?」
「……助かった」
「しかし、どうすればいいか……」
「麻酔薬を使うか?」
「誰が?」
その言葉に、沈黙が続く。誰もが状況の改善を望むのだが、自ら進んで動こうとはしない。ただ視線だけを動かし、心の中で「お前がやれ」と、呟く。その間も、壁を叩く音が響いていた。
「いい方法がある」
口を開いたのが、子犬を盾に取った男。彼曰く、合成獣(キメラ)を簡単に捕まえる方法があるという。方法は簡単。ソラが大事に思っている子犬を利用し、彼にその役割を担ってもらえばいいのだ。
彼の提案に、全員が飛び付く。しかし、ひとつだけ欠点も存在していた。下手すれば、合成獣(キメラ)を殺してしまう。あの生き物は、科学者達にとっては自分達の知識の結晶そのもの。失うには惜しいが、大事に発展するよりはいい。それに両者が戦えば、本来の目的を達成する。
「じゃあ、報告に――」
「それはいい」
聞き覚えのある声音に、全員が声音が聞こえてきた方向に視線を向ける。次の瞬間、全員の顔から血の気が引いた。
彼等の目の前にいたのは、自分達の上司。いきなりの上司の登場に全員が誤魔化しの言葉を言っていくが、それが通じる相手でもない。それどころか、逆に上司の怒鳴り声が響いた。
「も、申し訳ありません」
「ですが、いい方法があります」
「いい方法だと?」
「そうです、互いに戦わすのです」
先程、自分達が考えた計画を簡略的に話していく。当初の計画からは逸れてしまうが「両者が戦う」という部分だけを見れば、目的を果している。それどころか、此方の方が盛り上がる可能性が高い。部下の言葉に上司の男は不適な笑みを浮かべると、意見を受け入れた。