エターナル・フロンティア~前編~

 実行せよ。

 瞬時に、命令が下った。

 上司の命令を受け取ると、全員が一斉に頷く。彼等にとって、利用できるものは何でも利用する。人間、自身の命と立場を大事に思うのは普通だ。ただ、彼等はその一面が強かった。

 男が、例の子犬を連れてくる。子犬の方も雰囲気で自身の身が危ないと察しているのだろう、四肢を動かし威嚇の声を出す。

 だが、子犬を連れてきた者は暴れていようが関係ない。今、利用できるのは子犬。それに、ソラを釣れるいい道具だ。

 血生臭いパーティーに加わった、可愛らしい子犬。新たに参加した登場人物により、更に泥沼化していく。




 どうして――

 それが、ソラの最初の疑問。

 しかし疑問に対しての回答は得られず、それどころか目の前で最悪に近い状況が広がっていた。

 子犬が、相手の足下で丸くなっている。その頭上から迫っているのは、巨大な口に鋭い牙。長い舌から流れ落ちる、粘着性の高い唾液。それに、独特の臭いが周囲に漂い鼻腔を突く。

 危険な状況に、瞬時に救い出さないといけないと悟る。この場合力を使用し、救い出すのが一番。科学者達の望む形を取らないといけないことにソラは心の中で毒付くが、最善の方法はこれしかない。

 勿論、相手に恨みも何もない。だが、相手の命と子犬の命を天秤に掛けた場合、後者を選んでしまう。ソラは力を使用し、子犬を救い出そうとする。刹那、両者の目が合い時間が止まった。

 見た目は凶暴で荒々しくソラに敵対している雰囲気だったが、目が合った瞬間、相手の本心を見た。

 合成獣(キメラ)と呼ばれている生き物は、何処かソラに似ている。望まれて生まれた存在ではなく、周囲から疎まれている。科学者に利用され、最終的にはその命を奪われる運命にあった。

 殺す対象――最初は、そのように思っていた。しかし本心を知った瞬間、命を奪うのを躊躇う。それに冷静に考えれば、合成獣(キメラ)は子犬を食おうとしていたわけではない。

 本当に食おうと思っているのなら、目の前に投げ込まれたと同時に、胃袋の中に入れてしまっている。それどころか合成獣(キメラ)は子犬を優しく咥えると、ソラの目の前まで運びその場でしゃがみ込んだ。
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