エターナル・フロンティア~前編~

 言いたいことは、わからなくもない。偉大な知識と技術力を他人に自慢したいと思うのは、普通の感覚だ。だが、相手は相容れない存在。語れば語るほど、不快感が蓄積していく。

 語っているうちに自分の言葉に酔いはじめたのか、時折声音が裏返ってしまう。甲高い声は、脳味噌を刺激する。ソラの眉が、微かに動く。反射的に力を使用してしまいそうだったが、何とか抑え込む。

 今使用した場合、抱いている子犬に被害が行ってしまう。別に、周囲にいる人間がどうなってもいい。だが、子犬が傷付くとソラの心も傷付いてしまう。だから、力の使用を封じた。

 しかしこの場所から逃げ出すには、力を使用しないといけない。それが一番確実な方法だが、それは無理だった。

 ふと、男がソラのいる方向に近付いてくる。何かされるのではないかと反射的に身構えるが、横を通り過ぎる。

 本当の意味で男が向かった場所、それは血の海で横たわっている生き物。刹那、何を思ったのか男は肉の塊を踏み付けた。

「威力がありすぎたか」

 吐き捨てるように、言葉を発する。男の冷徹な言葉にソラは口を開こうとしたが、それを遮るかたちでざわめきが響いた。

 椅子に腰掛けていた者達が、次々と立ち上がる。その表情は、明らかに動揺していた。また一部の者は目を丸くし、一点を見詰める。そして「どうして、此方に……」と、呟いた。

「面白い結末だ」

 機械を通して響いた声音に、ソラの身体が反応を示す。そう、この声音の主はユアンだった。

「どうして、お前が……」

「いけませんか?」

 震える声音でそのように発したのは、多くの科学者を統括している者。子犬を盾にとった男の上司だ。面白い発言と認識したのか、ユアンは鼻で笑い相手を馬鹿にする素振りを取る。

「ここが違います」

 言葉と共に、自身の頭を人差し指で突っ突く。更に口許を緩め、周囲にいる科学者達に視線を向けた。

 最初、この場所へ来るのを諦めていた。だが、自身がいない場所で好き勝手に行なわれている今回の出来事を、黙って見過ごすほど人間ができているわけでもない。彼が出した答えは、徹底的にぶっ潰すというもの。その為に、今まで築いてきた人脈を利用したのだった。
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