エターナル・フロンティア~前編~

 裏の世界で活躍している者の全てが、同じ位置に立っているわけではない。互いに足を引っ張り合い、激しく牽制し合っている。その中の特に仲が悪い人物に接触し、協力を仰いだ。

 結果、接触した人物が手を回し、ユアンがこの場所に足を踏み入れることができた。立ち入ることができれば、ユアンの勝ちは決まっている。それだけ、相手の痛い部分を突くのが上手い。

 ユアンの姿に、見学していた者達が一斉に逃げ出す。彼等も本能的に知っているのだ。ユアンに関わってはいけないと――

 見事な逃げの姿に、この場で仕事を行なっていた科学者達が唖然となってしまう。また同時に、落胆する。

「さて、どうしましょうか」

 彼の声音が、周囲に響く。その冷徹な声音に全ての科学者の背筋が凍り付き、渋い表情を作った。




「予想外だ」

 言葉を発したのは、ユアン。彼自身、今回の結末は予想外の出来事。まさか人工的に生み出した生き物が、ソラに心を開き身を委ねるとは――驚きと同時に、興味が湧き出してくる。

 しかしその生き物は、命を落とした。いや、馬鹿な科学者の手によって死んでしまったのだ。

 実に惜しいことをしたと、ユアンは嘆く。ソラに懐いた合成獣(キメラ)を研究したら、面白いデータが取れる可能性が高かった。

 そして得られたデータを使えば面白い生き物を生み出せたかもしれないと、後悔しても今は遅い。

 だが、いい面も存在していた。彼が大事にしているソラが、無事な姿で目の前に立っているからだ。

「ああ、その子犬は……」

 ふと、ソラが抱いている子犬に目が行く。先程はあれだけ人間に嫌悪感を抱いていた子犬だが、ソラの腕の中で大人しくしている。しかしユアンと目が合った瞬間、牙を剥き出し威嚇をはじめた。

「やはり、嫌われている」

「動物は、勘がいい」

 鋭い指摘に、ユアンは肩を震わせ笑い出す。刹那、彼の笑い声が止まった。そして次の瞬間、ユアンの手がソラの首元を締め上げた。突然の行為に、ソラは反撃のタイミングを見失う。
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