エターナル・フロンティア~前編~
勿論絞められる理由もわからないし、絞められるようなことも行なっていない。ソラはその点を尋ねた。
だが、彼の回答は素っ気無いもの。彼曰く、首を絞めたことに明確な理由は存在しないという。理由が存在していないことに、ソラの顔が歪んでいく。ふと、その表情を見た時、ユアンが手を叩いた。
「ああ……理由は、それだ」
無表情のユアンの口許が、徐々に緩んでいく。彼が首を絞めた理由が、ソラの歪んだ表情を見た瞬間に決定したという。
ソラが苦しんだ表情は、ユアンにとっては甘美なもの。その表情を見る為にソラを苦しめ、表情を歪ます。それが命を奪うギリギリの範囲であっても、関係ない。彼の逸脱した感覚に、ソラは背中に冷たい物が流れ落ちる。まさにユアンの精神は、壊れているといっていい。
「安心していい、もう絞めない」
反射的に距離を取るソラに、ユアンの怪しい笑いが響く。一方、ソラもユアンと同じ笑い方をする。
「奴等は、どうなるのです」
「さあ、僕はあずかり知らず」
彼が訪れた最大の理由は、ソラの身の安全を図る為である。いや、先程の内容を総合すると「取り返しに来た」というのが、正しい意味合いだ。だから、それ以外は関係ないという。
「そんなことより、僕と付き合わないか?」
「付き合う?」
「別に、変な意味で言っているわけじゃない。そう、データが欲しいんだ。君は、貴重だから」
「人体実験……ですか」
「隠さずに言えば、そのようなものだ。でも、断る理由はないだろう? 君を助けたのだから」
別に、ユアンに救いを求めたわけではない。勝手にソラの前に訪れ、今に至る。確かに考え方を変えれば、ユアンが訪れたので被害を最小限に抑えることができた。そう考えると、感謝できなくもない。だからといって、ユアンの人体実験に付き合うわけにはいかない。それ以前に、身体を好き勝手に弄くられたくなかった。
「手加減をする」
彼の言葉は、他の科学者に比べたら信頼できる。それに大切にしているので、命の保障がないというわけではない。いや、それ以前にソラに選択肢は存在していない。現在ソラがいる場所は、ユアンの私室。例の場所から開放されたのはいいが、彼の私室も精神的に重い場所だった。