エターナル・フロンティア~前編~

「君のデータは、大いに役立つ。そう、幼馴染に対しても……ね。だから、協力した方がいい」

 「幼馴染」という単語に、ソラは過敏に反応する。彼にとって幼馴染は、イリアしかいない。そのイリアが、どのように関わっているというのか。確かに、二人は近い位置にいる。だからといって、特別“何か”があるという話は聞かない。ソラは、不安感が増していることに気付く。

「顔は正直だね」

「彼女に、何をするんだ」

「別に、何もしない。ただ、僕の仕事を手伝ってもらうだけだ。だから、そのような目で見ないで欲しい」

「本当に、彼女の為になるのか?」

「勿論」

 本心ではユアンに身体を弄くられたくないが、イリアが関わっているとなると微妙に心が揺らぐ。

 イリアの我儘に困っているが、なんだかんだで彼女に甘いのではないかと心の中で苦笑する。

 揺れる心情を瞬時に感じ取ったのは、ソラの腕の中にいる子犬。クリクリとした瞳で大事な主人の顔を見ると、切ない声音で鳴く。子犬の心情としては、ソラが辛い目に遭ってほしくないというもの。しかしソラが出した結論は、ユアンの提案に乗るというものだった。

「素直だ」

「拒否権は、なさそうですから。それに、彼女が……いえ、何でもないです。こいつを苛めないで下さい」

「苛めたりはしない。僕は、嫌われている。下手に手を出して、噛まれたくはない。実に強暴だ」

「凶暴ではないです。嫌いな相手に対して、厳しいのです。それと、本当に約束を守って下さい」

「……当然」

 そう囁くと同時に白衣のポケットから携帯電話を取り出すと、自分の手助けをしてくれた人物に電話する。

 何度か交わされる短い台詞。ソラは無言で彼の会話を聞いていたが、途中理解できない単語が混じる。

 だが、話している雰囲気からして怪しい内容ではないということはわかった。数分後「失礼します」という言葉と共に、電話が終了する。どうやら話が纏まったのか、ユアンは満足そうな表情を作り、暫く自分がソラの管理を行なうことが決定したことを伝えるのだった。
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