エターナル・フロンティア~前編~

 イリアとの約束が、別の意味で効果を出した。彼がイリアと約束したのは、彼女の父親の精神面を甚振ろうとしていたからだ。しかし今は別の玩具を見付けたので、イリアの父親への甚振りは後回しとなった。

 悪運がいい。

 そう、心の中で微笑んだ。




 彼等が向かった場所は、地下に造られた研究施設。大々的な研究と実験を行なう場合に使用される部屋であり、今回ユアンは様々なデータの習得を目的としているのでこの施設を利用する。

 ソラは過去何度もこの場所に連れて来られているので、特に驚く素振りを見せない。だが、地上とは違う地下特有の雰囲気は慣れることはない。空調設備は整えられているだろうが、何処か息苦しい。

 目的の場所まで、無言が続く。だが、子犬だけは違っていた。ソラと一緒に何処かへ行けるのだと勘違いしているのか、好奇心たっぷりの視線を周囲に走らせ、自身の周囲に広がる光景を眺めている。

「この部屋だ」

 ソラの目の前に立ち塞がるのは、見慣れた扉。そして、扉の先に広がる光景も覚えている。

 ユアンが扉の前に立つと人工的な音を鳴らし扉が左右に開き、中から眩しい明かりが漏れ出した。

 扉が開く音に中で、仕事を行なっていた者達の視線が一点に集まる。ユアンの登場に全員が挨拶をするが、ソラに視線が行くと数人の科学者が目を疑った。誰もが、彼が抱いている子犬の存在を驚く。

「あのー、ラドック博士」

「何だ」

「あの犬は……」

「ああ、懐いているらしい。一匹にしておくと何を仕出かすかわからないので、連れて来た」

「そ、そうですか」

「それより、準備はどうなっている」

「だ、大丈夫です」

 ユアンの指摘に、子犬を眺めていた科学者達が一斉に自身の仕事を再開する。しかし子犬の存在が気になるのだろう、数人の科学者が子犬の方に視線を向けるが、ユアンが再び声を掛け仕事に戻す。一方ソラは、子犬を抱き締めつつ部屋の中へ重い足取りで入って行く。
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