エターナル・フロンティア~前編~

 早く目覚めないと。

 懸命に意識を現実の世界に戻そうとするが、夢という名の檻から逃げ出すことはできない。

 何かが胸元から込み上げてくる。ソラは胸の部分を両手で押さえると、喉からそれを吐き出す。吐き出されたのは、どす黒い血液。血液は次々と喉の奥から吐き出され、顔を染める。

 再び、激しく心臓が鼓動する。

 次の瞬間、薄らぐ視界の中に人間の形を持つ黒い物体が飛び込んできた。背丈は、十代に満たないくらい。身体全てが黒一色なので相手がどのような表情をしているのかわからないが、漂う雰囲気で此方を凝視しているのはわかる。ふと、黒い人物がソラがいる方向に手を差し出した。

(君は……)

 喉に血が詰まり正確に言葉を出すことはできないが、相手には言葉が通じたのだろう空間の中に言葉が響く。

 その言葉は、何度も何度も謝るもの。勿論、何故相手が謝ってくるのか全くわからなかった。

 ソラはどうして謝るのか問うが、相手からの明確な言葉は返ってこない。ただ、謝り続ける。

 その時、全身に流れる血液が沸騰するような感覚に陥る。その感覚は薬を投与され、無理矢理覚醒を促す時と同じだった。

「……生きて」

 はじめて相手が違う言葉を発する。ソラは相手の言葉に目を見開くと、黒い物体を凝視した。

「それが、僕の願い」

 黒い物体の顔の一部分が揺らぎ、黒色の下に人間の顔が浮かぶ。顔付きは十歳に満たない少年で、顔は記憶の中に無い。だが、ソラと一箇所共通する部分があった。

 それは瞳の色。自身と同じ瞳の色を持つ少年にソラは再び相手が何者か尋ねるが、やはり回答はない。

 しかし暫くの沈黙の後、相手が口を開き言葉を発しようとする。だが、言葉が耳に届く前に意識が覚醒した。




 目を見開いた時、目の前に数人の人間の顔があった。何やら慌しい声でやり取り、足音がそれに続く。今寝かされているのだろう、背中や尻が冷たい。しかし、自分の身体が自分のものではない不思議な感覚が付き纏う。その為か、手足を自由に動かすことができなかった。
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