エターナル・フロンティア~前編~

 奥底まで落ちていく――それもまた、一興である。

 それに引き返すことができない位置にいるので、今更自身の将来や未来を心配する必要はない。

 ユアンは足を止めると、銃を握っていた手を視線の位置まで持って行く。ジェイクの肉体から噴出した血によって、白衣の袖口が染まっている。これこそユアンが罪を犯した証拠だが、特に感情は湧いてこない。

 気に入らない相手というのも関係しているが、他の者も直接的や間接的に殺人を行なっているからだ。

 死者は何処へ行く。

 ふと、ポツリと呟く。

 無意識に発したのは、宗教関係者が説法に使いそうな言葉。ユアンは無宗教なので神の存在を信じていないが、死後の世界に興味がないわけではない。また、魂の行方も興味がある。

 現世で悪の所業を行なうと地獄という世界に落とされ、善の行為を行なうと天国という世界へ行ける。

 神話関係の話で知った、両者の世界。もし本当に存在するというのなら、ジェイクは勿論ユアンやその他多くの科学者は地獄へ行くだろう。宗教が一般的な時代の頃は、地獄へ行くことを恐れ回避しようと心掛ける者が多かったというが、今の時代地獄という単語は死後だ。

(まあ、本当に存在するというのなら見てみたいものだ。しかし、最近……彼の影響か……)

 その相手というのはソラ。彼は実験や研究の対象であるが、それ以上の関係を築いていというのは間違いない。

 もし両者が同じ職業だったら――

 だが、考えたところで決められた運命を変えることはできない。それに何処までも落ちていき、どのように自分が変わっていくのかも見てみたかった。そう、その場所こそ現世の地獄。


◇◆◇◆◇◆


「……ということだ」

 小声で言葉を発したのは、クリスだった。彼は今、人目のない廊下の片隅でタツキに電話をしている。二人が話している内容というのは、例の件。ユアンがジェイク・マッカーディを銃殺したという話だ。

 クリスから聞かされた内容にタツキは絶句するが、ユアンとジェイクの両方の性格を知っているので「そう」と一言返し、納得している様子であった。
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