エターナル・フロンティア~前編~
相手の態度に唖然とした表情を作るクリスであったが、相手が勘違いしてくれたことにホッと胸を撫で下ろす。
もし相手がユアンのような人物であったら、クリスの態度で何をしていたか簡単に見抜いている。しかし相手は、それほど観がいい人物ではなかった。自身の運の良さに、改めて感謝する。
「タツキ」
携帯電話を顔に近付けると、名前を呼ぶ。すると、一拍置いた後タツキからの返事が返って来る。
『聞いていたわ』
「……という訳だ」
『仕方ないわ。これ以上は、貴方の身に危険が及んでしまうもの。そうなったら、私が困るわ』
「心配しているのか」
『目覚めが悪いのよ』
タツキが自分のことを心配してくれていると思ったクリスは声音を弾ませるが、タツキから返された言葉は冷たい。彼女の本音に肩を落とすクリスであったが、へこんでいる場合ではない。
彼は心の痛みを我慢しつつ、一言「また、電話する」と言い残し、電話を切る。と同時に、溜息を付いた。
(まあ、やるだけやるか)
タツキにあのように言われたが両者は腐れ縁の関係なので、状況の提供を止めることはしない。
彼女は複数の状況を集め、現在行なわれている能力研究の負の部分を解明しようとしている。いつか公に公表し言及するつもりといっており、クリスも彼女の考えに同調しているので裏で動く。
しかし、本当に可能なのか――
最近、不安感の方が強くなってきている。
ユアンがジェイク・マッカーディを殺害したことにより、タツキは権力が集中すると言っていた。
今まで権力が分散されていたことにより、大事に至っていない。しかしそれが少数に集まった場合、今までの常識が壊されその者の意見が常識になってしまう。最悪、死人が増える。
クリスは壁に身を預けると、研究所で働いている科学者達の構図を考えていく。全てを把握しているわけではないが、今まで得た情報を総合し考えを纏めていく。その時、彼の視界の中にユアンの姿が飛び込んでくる。予想外の人物の登場にクリスは舌打ちすると、反射的に視線を逸らす。