エターナル・フロンティア~前編~
「詫びに、酒を奢る」
「本当か?」
「嘘は言わない」
相手の首に腕を回すと、クリスは今回の一件を詫びる形で約束を交わす。「酒」という単語は、相手にとっては魅力的なもの。酒豪とまではいかないが、毎日のように酒を飲む生活を送っている。
クリスはその点を知っているので「酒」という単語を出し、いい方向に話しを持っていった。
(本当に、酒が好きな奴だ)
同僚の酒好きに呆れる部分があるが、今回それによって助かったのも事実。しかし今月の財布状態を思い出した時、表情が歪み出すが一度言葉に発してしまったものを訂正することはできない。
(仕方ない、切り詰めるか)
手っ取り早く何を切り詰めるのかと考えていくと、真っ先に脳裏に過ぎったのは煙草であったが、同僚が酒を好んで飲んでいるようにクリスも煙草を好んで煙草を吸っているので結構きつい。
クリスは相手に気付かれないように溜息を付くと、仕事を上手くこなしつつタツキに情報を流そうと決意するのだった。
◇◆◇◆◇◆
クリスとの電話を終えたタツキは、神妙な面持ちで考え事をしていた。状況は、タツキが想像していたより悪い方向に動いていっている。そしてクリスが考えていたようにタツキも、ユアンの動向を恐れる。
(あの時と、違うのね)
はじめてタツキがユアンと出会った時、もう少し話がわかる人物だと思っていた。しかしよくよく考えれば、あの時から変わっていた。といって、話が通じる相手でもなかったことを思い出す。
今、彼の性格が激しく歪んでしまっていることをクリスの話で知っている。それが無性に、心に引っ掛かる。
今、会ったら――
残念ながら、結果がいいものではない。
両者は現在、対立する立場にいる。もとは同じ道を進んでいたとはいえ、タツキは今ソラ達の味方。一方のユアンは彼等の身体を弄くり、血を求めている。タツキがユアンに会った瞬間、彼のやり方に怒りを覚え平手打ちをしてしまうだろう。だが、それは実に空しい。