エターナル・フロンティア~前編~
感情をぶつける形で、グラスをテーブルの角に叩き付ける。ガツンという重い音を鳴らし、テーブルの上に酒と氷が四方に飛び散った。父親はその音に身体を震わすが、真っ直ぐな瞳で酔って充血した妻の瞳を見据える。
再度母親の手がボトルに伸びた瞬間、父親が寸前でそれを奪い取った。まるでお気に入りの玩具を取られ、悔しがる子供のような母親。しかし父親は、そんな妻に強い口調で言い放つ。
「違う。アイツはお前の子だ」
「いいえ、違うわ。私は、見たのよ。あの子が、不思議な力を使っているところを。それにあなたは、ひと言も言わなかった。もう、嫌よ。私は育てていく自信がない。初めから無理だったのよ。どうして、どうして私だけ……。早く私を解放して、解放してちょうだい」
母親の悲痛な叫び声に驚き、ソラは言葉を発してしまう。慌てて口許を両手で押さえるが、ソラの言葉に両親の会話が止まった。
父親が、ソラのもとへやって来る。ソラは俯き顔に不安の色を湛えると、父親は片膝をつき優しく頭を撫でる。だが徐々に撫でる手に力が込められていき、髪をグチャグチャに掻き回す。
ソラは、父親の無言の行為を理解する。悪いことをすると父親は一方的に怒らず、いつもこのように頭を掻き回す。怒られても仕方がない。約束を破り、眠りに付いていないのだから。
「……お父さん、お母さん。喧嘩しているの? 喧嘩はよくないよ。仲良くしないとダメだよ」
怯えながらも、定義する。だが息子の言葉に顔を顰め、父親は涙を流す。ソラが父親に対する印象は、強くて逞しい尊敬できる人物。だから息子の前で泣くのは、とても不思議な感じだった。
「大丈夫だ。ただ、少し母さんと話が合わないだけだから。お前が心配することでもない。だから、部屋に戻って早く寝なさい」
「いいのよ。こっちにいらっしゃい……」
覗き見していたのが自分の息子とだとわかると、母親は顔に掛かる乱れた髪を掻き揚げると、手を振り側に来るように呼ぶ。
ソラは変わり果てた母親に恐怖心を抱くが、惹き込まれるようにソラは母親のもとへ歩み出る。
その時、父親の「行くな」という声が響く。
母親の側に行くと、所々が傷んでいるソファーが目に付く。両親の喧嘩の影響――ソラは瞬時に察したが、母親にそれを尋ねることはしない。ただ無言のまま、促される形でソファーに腰掛けた。その瞬間、母親から強いアルコールの臭いが漂い、ソラは顔を顰めてしまう。