エターナル・フロンティア~前編~

「何故、邪魔をするの? この子は……この子は、私の坊やの入れ替わりなのよ。あなただって本当の子に会いたいでしょ」

「違う! 何おかしなことを言っているんだ」

「おかしなことを言っているのは、あなたよ。どうしてわかってくれないの。早く、私の子を連れて来て」

 半分に砕けたコップを握り締めながら、母親が此方に向かって詰め寄ってくる。破片は母親の掌も傷付け、鮮血はコップを伝わり床の上に点々とした模様を作り出す。テーブルクロスを頭に巻きつけている父親は、ソラをきつく抱き締め母親からの攻撃から護ろうとする。

 父親に抱き締められた腕の中から見た母親の姿は、ソラの知っている母親の姿ではなかった。

「僕は、お母さんの子供だよ」

「いいえ。アナタは、私の本当の子供ではないの」

「やめろ、言うんじゃない」

 父の叫び声が響く。

 しかし母は、夫の言葉を無視し、狂った形相で口を開く。

「アナタは、化け物よ」

 その言葉は、ソラの心に深い傷を残した。


◇◆◇◆◇◆


 一筋の涙が、頬を伝う。

 生暖かい液体の感触にソラは、眠りから目覚めた。

 眩しい。

 人工的に生み出された明かりが白い天井と床に反射し、目覚めたばかりのソラの目を刺激する。

(ああ、何故)

 何故、あのような夢を見たのか。記憶の底に封じ、二度と目覚めることがないことを願った。だが、何かのきっかけで封印が解け、夢に現れた。母親の形相が、心を激しく締め付ける。

 父親に対してはいい印象を持つが、母親に関しては一言「最悪」という言葉しか思い付かない。利き手で、視界を覆う。ふと、その動作によって利き腕に点滴をうたれていることに気付く。

 今、清潔なシーツが敷かれたベッドに横たわっている。そして誰が着替えさせたのか、手術用の服らしき物を着せられていた。どのような治療が行なわれたのか知らないが、肉体の辛さは消えている。
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