エターナル・フロンティア~前編~
「言い忘れたが、食事もひっくり返していた。どうやら、特定の人物が与えないと食しないようだ」
その「特定の人物」というのは、勿論ソラのことを示す。リオルと出会った時から、食べ物を食べていないのだろう。相当の空腹を感じているだろうが、リオルの元気さは相変わらずだ。
何か与えたいが、生憎何も持っていない。といって、ユアンがリオル用の食べ物を持っているわけがない。彼の手首に、包帯が巻かれているのに気付く。これは暴れたリオルを取り押さえようとして引っ掻かれたか、それとも噛み付かれたのか。どちらにせよ、実に逞しい。
ふと、リオルの動きが止まった。先程まであれほど元気いっぱい動いていたのだが、どうやら空腹の限界がきてしまったのだろう、ソラの腹の上でへたり込んでしまい何度も腹を鳴らす。
「何かを食べたい」と訴えるかのように、ソラの顔を見て鳴くリオル。早く何か与えないと、命の危機に関わってくる。
ユアンが食べ物を持っていないというのは、彼の性格からして判明していることだが、現在の状況を考えると頼めるのはユアンしかいない。だが、本音を言うと彼に貸しを作りたくない。
だが――
今は、リオルの命の方が大事だ。
「条件がある」
「条件?」
「簡単なことだ」
「実験か研究の対象ですか?」
ユアンが条件を出す場合、大体「人体実験の道具」が、多い。今回もそれを条件として提示されているのだろうと考えたソラは、彼の言葉を待たずして「人体実験」という単語を発した。
だが「人体実験」は、ユアンが出した条件に当て嵌まるものではなかった。なら、一体どのような条件か。
明確な条件を提示して欲しいものだが、ユアンが詳細を説明することはなかった。ただ「受け入れるか?」と繰り返し、ソラからの回答を待つ。
リオルの命が掛かっていなければ、ユアンの条件を無視していた。しかしリオルを大事にしたいという気持ちが強いソラが、無視できるわけがない。現在の立場を考えると、完全にソラが不利。この時点で、弁論で勝てるわけがなかった。
ソラが了承してくれたことにユアンは不適な笑みを浮かべると、白衣のポケットから携帯電話を取り出し、部下にリオルの餌を持ってくるように命令する。勿論、部下の反応はいいものではない。