エターナル・フロンティア~前編~
噛み付かれたことや引っ掻かれたことがトラウマとなっているのか、電話口から聞こえてくるのは「お前がやれ」という言葉。不甲斐ない部下の姿にユアンは溜息を付くと、一言「いい加減にしろ」と、電話口で騒いでいる部下全員に聞こえるほどの大声を放っていた。
流石に、ユアンの一喝は強力だった。今の一言で部下達は一瞬にして静まり返り、謝ってくる。
「誰でもいい、来い」
今の一喝で、愚図愚図していると再び雷が落ちると学習したのだろう「すぐに用意します」と言い残し、電話が切られた。
一方的に電話を切られてしまったが、彼等は命令を受け取りリオル用の餌を持って来ると約束した。あのように不真面目な一面を持っているが、命令は必ず守る。だから、ユアンは信頼していた。
「部下が来る前に、話がある」
「条件……ですか?」
「そうだ」
彼の言葉に、ソラは身構える。人体実験ではない、ユアンの条件。彼が提案する条件がソラに有利に働くことは殆どなく、大半が不利に働く。所詮、ユアンとってソラはいい道具なのだ。
ユアンは怪しく口許を緩めると、何を思ったのか自分が今まで仕出かしたことを独白する。
誰を殺し、誰を追い詰めたか。
淡々と語る姿は何処か恐怖心を煽るが、ソラは表情を崩すことはしない。ただ静かに、彼の独白を聞く。
唯一ソラを驚かせたのは、ジェイク・マッカーディが死亡したということ。それも、ユアンに殺され。
しかしなんとなくであったが、ジェイク・マッカーディがユアンに殺されるのではないかと思っていた。殺される理由は様々であるが、一番の理由は「好き勝手に振舞う」という部分だろう。
確かにあの人物は天才であったが、人の心を読むのが下手だった。長い間この世界にいるので、感情が欠落した――といえば簡単に説明が付くが、彼の場合はその「欠落した」では説明が付かない。
この場合、サイコパスというべきか。いや、独白をしているユアンもサイコパスの一面を持つが、全ての良心が欠落しているというわけではない。現に自分の部下には優しく接し、一定以上の成果を出した者を褒め称える。
だからこそ、ユアンは多くから信頼を得ている。ジェイクを殺した件も、その信頼によって揉み消されるだろう。ソラはそう意見すると、ユアンは不適に笑った。