エターナル・フロンティア~前編~
ああ、やっぱり。
彼の不適な笑みに、ソラは全てを悟る。
ユアンは、人間関係の作り方が上手い。上司にペコペコするわけではなく、真正面から立ち向かう。一方自分の部下に対し厳しく接するも、実力を示した者を褒め決して差別はしない。
上に立つ者は、下の者を蔑ろにしてはいけない。特に複数の人間が関わる仕事は、連携が重要となる。一方的な命令は、下の者の反感を食らう。ユアンは経験でそれを学び、行動で表す。
といって、甘やかすやり方も逆効果だ。時に厳しく時に優しく――上手く使い分けてこそ、多くの者の心を掴む。
説明では簡単だが、いざ実践すると結構難しい。それを難なくやってのけるのだから、これは天性の才能というべきか。カリスマ性を持っているからこそ、人々を惹きつけていく。
長い時間を掛け、自分の立ち位置を作る。結果、ジェイク・マッカーディを殺害しても大事に発展しない。
流石だ。
ソラは、その点は認めていた。
「金で全てを買えると思っている者も多いが、案外そうでもない。それを解らぬものが多くて困る」
これもまた、実体験が関係しているのだろう。ユアンが言うと、妙にリアリティが感じられる。このような知識を使いたくはないが、持っていて邪魔になるということはないので覚えておく。
しかし、このような形でユアンから世の中の常識を学ぶとは――ソラの心境は、複雑だった。
その時、ドアが開く音が響く。その音に続き、二十代前半の男が荷物を持ち入室してきた。
「お持ちしました」
「ご苦労。ああ、君が持って来たのか。一番引っ掻かれ噛み付かれたというのに、偉いものだ」
「ジャンケンで負けました」
「そのような方法で、決めたのか」
「皆、嫌がっていまして……」
彼が言っている意味は、わからないわけでもない。自分の前で暴れた犬の前に餌を持っては行きたくないが、ユアンの命令があるので行かないわけにもいかない。なら、何ら不満を持たれない公平な方法で決めるのが一番いいということで、ジャンケンに至ったという。