エターナル・フロンティア~前編~
何者かによってアレクは殺害され、ソラの肉親は全て失われた。通り魔や殺人鬼が事件に関与した――という話題が出たが、明確な犯人はいまだにわかっていない。それもそうである。ソラの父親アレクを殺したのは、彼等の元同僚でありソラを取り戻す為に行ったのだ。
そして裏で手を回し、捜査を妨害した。結果、この事件は有耶無耶の中で終了し、人々の記憶から消えた。
リダードが語る真実に、ソラの体内に流れている血が沸騰してくる。当初、自分は「ヨシュア」という少年のクローンと聞かされ打ちのめされていたが、父親が元同僚に殺害されたという事実を聞いた瞬間、怒りで身体が震え心の中に悪魔が宿り始めてくるのがわかる。
「お前が……」
繰り返し囁かれる、相手への恨み。滅多に汚い言葉を発することのないソラが、リダードに向かい罵倒する。
確かに父親は自分を生み出すプロジェクトに参加していたが、それ以上に沢山の愛情を注いでくれた。そして殺害されていなければ今の平穏な生活を送り、ソラは別の道に進んでいた。
それなのに――
刹那、感情が爆発した。
絶叫と共に放出された絶大な力は、周囲の物を破壊していく。室内に置かれていた機械類は一瞬にして破壊され、所々で火花が散っている。ユアンは反射的に纏っていた白衣で顔や頭を覆ったので大怪我は免れたが、それ以外の部分が飛び散った機械の破片で傷付いてしまう。
感情の爆発の影響で使われる力ほど、厄介なものはない。ユアンは感情のままに力を使用するソラに、苦虫を潰したような表情を作った。現在の状況を生み出したリダードは、もし肉体を持っていたとしたら顔面蒼白だろう。だからといって、逃げ出すことはできない。
ソラの腕の中にいるリオルは、大好きな人間が不可思議な力を使用したことに恐怖心を覚え、身体をガタガタと震わしている。しかしソラへの信頼は失われておらず、リオルは前足でソラの胸を叩き懸命に自分の気持ちを訴えかけていくが、頭に血が上っているソラが平常心を取り戻すことはない。
一歩一歩と踏み締めるようにしてソラはリダードのもとへ行くと、徐にリダードの脳味噌が納められている機械に触れた。
精神感応の時に使用した力と違い現在ソラが使用している力は、確実に相手を殺害するもの。脳味噌に加わる力により、リダードは声にならない悲鳴を上げる。次の瞬間、生々しい音と共にリダートという存在が消滅し、脳味噌が納められていた機械の隙間から赤い液体が漏れ出し床に滴り落ちた。