エターナル・フロンティア~前編~
感謝する。
義父に感謝しないユアンだが、今回の件は感謝の言葉を述べてもいい。それに、義父が携わっていたプロジェクトが判明した。それに上手く物事を進めていけば、ソラを自由にできる。
ソラの胸の中で威嚇しているリオルは――ユアンにとっては小者同然で、どうでもいい存在だった。それに犬は相手の感情を読み取り行動することができるが、人間が使用する言語を用いることはできない。だから適当にあしらえば、リオルは障害になる生き物ではなかった。
しかし、今回は本当に危なかった。身を守るのを数秒遅かったら、飛び散った破片が身体の重要な部分に突き刺さっていただろう。といって無事というわけでもなく、破片が突き刺さっている場所から血が滴り落ちていたので、後で適切な治療を受けないと化膿してしまう。
(まあ、これくらいは)
ソラを自由にできるのなら、これくらいの傷は何ともないという。それに怪我を負うのは慣れており命を失ったわけではないので、彼にしてみれば大したことのない問題でもあった。
(さて……)
自分の思い通りに働いたことにより口許が緩んでいくが、他の者達と合う場合笑顔は不似合い。
ユアンは瞬時にいつもの冷静な表情を作ると、この状況を伝えに向かう。そして多くの仲間の前で得意の演技を披露し、自分も被害者と思い込ませる。これも全て自分が動き易い為に――
◇◆◇◆◇◆
「全く、次々と……」
ソラの件を耳にしたクリスは、立て続けに起きる事件に頭を痛めていた。特にユアンの周囲に起こる事件が目立ち、どの事件も彼が関わっている。首謀者――という見方もできなくもないが、弁論に長けている彼が自分が首謀者と発言するわけがなく、寧ろ被害者と語る。
「こういう時、高い地位に就いていればと思うが……まあ、これは自分が望んだことだから仕方ない」
クリスが語るように高い地位に就いていれば、事件の深い部分を知ることができる。その反面、非人道的な行為に手を染めないといけないのだが、クリスはそれを嫌っているので現在の地位にいる。しかしこのように立て続けで事件が発生すると、考えを改めないといけないと思いはじめる。