エターナル・フロンティア~前編~
タツキは言う、一時的な感情で物事を判断してはいけないと。だからクリスには、自身の二の舞を踏んで欲しくないという。彼女の発言にクリスは意味深い笑い方をすると、タツキの心情を突く。
これは考え過ぎか、タツキはクリスに自分の役割を担って欲しいと言っているように聞こえる。勿論、タツキはそのような役を担って欲しいと直接的には頼んでいないが、今までの会話を総合すると間接的に頼んでいるように読み取れる。その点を指摘すると、タツキが黙り込んだ。
『……そうね』
本音を言うと、タツキはクリスに担って欲しかった。自分が耐えられずに逃げ出したことを他人に任せるというのは身勝手そのものだが、クリスは特に反論はしない。ただ一言「そうか」と囁くように返事を返すと、タツキの願いを受け入れてもいいと言葉を続けていた。
その言葉に、タツキは激昂する。まさか激昂されるとは思わなかったクリスは唖然となり言葉を失う。
「な、何で怒るんだ」
『普通は怒るわよ』
大声で騒がれたことで、クリスは反射的に携帯電話を耳から離す。その間もタツキの大声は続き、携帯電話を耳から離していても彼女の言葉が聞こえてくる。これこそ女特有のヒステリーというものか、クリスはタツキの大声が治まるのを待つと再び携帯電話で話しはじめた。
「拒否した方が良かったのか?」
『話の流れでは』
「そう言われて、拒否はしない。拒否すれば、再びお前のヒステリーを聞かされて堪らない」
『そ、そうね』
「それに俺も……」
しかし、言葉が最後まで紡がれることはなかった。今、周囲で同僚が仕事を行っている。彼等が他人の会話に聞き耳を立てているということはないが、万が一ということがあるので席を外す。
周囲に人目がないことを確認すると、クリスも本音を伝えていく。彼はタツキに言われるまでもなく、ソラの手助けをしようと考えていた。だが、彼だけを特別扱いできないという。
そもそも、苦しんでいるのはソラだけではない。彼と同じように力を持つ者は、今でも想像を絶する苦痛を受けている。だから、詭弁と言われてもいいから全ての者を助けたいというのがクリスの考え。その考えにタツキは愚かな考えを押し付けたことを詫び、無理はいけないと忠告する。