エターナル・フロンティア~前編~
「わかっている。それにヘマはしない。俺は臆病だから、引くタイミングはわかっているさ」
『葬式は出さないわよ』
「おいおい、酷い言い方だな。それに、勝手に俺を殺すな。目標は、90まで生きることなんだ」
『貴方なら、大丈夫よ』
「そう、自負している」
『本当に、貴方らしい。それと、愚痴を聞いてくれて有難う。結構、ストレスが溜まっていたのよ』
「俺は、ストレスの捌け口か。まあ、という俺もお前に愚痴を言ったりしているからな……」
『お互い様よ』
「……だな」
『あっ! 患者が来たから切るわ。また、後で――』
その言葉を残し、タツキから電話を切る。それに合わせクリスは携帯電話を白衣のポケットに仕舞うと、自分の席へ戻る。すると複数の同僚はクリスが彼女と喧嘩していたと勘違いしたらしく、茶々を入れてくる。
「違う」
「本当か?」
「俺に彼女がいると思えるか」
「納得」
「うん。確かに」
タツキとの会話を誤魔化す為とはいえ、自虐ネタは身体に堪える。現在クリスは独身で尚且つ彼女がいない独身貴族だが、本音では自分に愛情を示してくれる女性を欲している。しかし、なかなかそのような人物が登場せず、同僚の方がもてるという現実が其処にあった。
「という訳だから、彼女じゃない」
「ああ、残念だな。お前に彼女ができたのかと、こいつ等と話し合っていたんだ。で、話の内容で別れに発展したら、慰めてやろうかとそういう話もしていたんだ。何だ、違うのか」
「その気持ちは嬉しいが、本当に彼女じゃない。何と言うか、腐れ縁の相手という人物なんだ」
両者の関係はクリスが言っているように腐れ縁だけであって、恋人という関係に発展はしない。また元同僚という関係でもあり、その繋がりで今も協力し合っている。人によってはその間に愛情が生まれるかもしれないが、残念ながら両者の間に愛情が生まれることはない。