エターナル・フロンティア~前編~
やはり原因は、彼女達にあった。噂が研究室にまで流れているとすれば、アカデミーの生徒の大半が知っていると思った方がいいだろう。しかし、誰もそのことをイリアに直接言ってこない。噂の発信源があの二人なので、本気にしている生徒が少ないということだろう。
それでもアカデミー中に広まっているということは、中には本気で信じている生徒もいるかもしれない。それを考えると明日からアカデミーに登校することが、恥ずかしくなってしまう。もしかして今まで気付かなかっただけで、影で噂話をされている可能性が考えられる。
「他に、何か噂を聞いていますか?」
「いや、特に聞いていないね。それに噂というものは、時間が経つにつれ変化をしていくもの。気にしない方がいい」
「それでしたら、安心しました。あっ! ラドック博士が担当ということでしたので、ひとつお願いを聞いてくれますか。最近のソラは、元気がないことが多くて……何かがあったのでしょうか? もし何かがあったのでしたら、キチンと治療をしてあげて下さい。宜しくお願いします。今のままでしたら、ソラは今以上に具合が悪くなってしまうと思います。それは、辛いです」
「肉体的なことなら治療できるが、精神面となると僕の担当ではない。精神科医に相談し、君かご両親に協力を仰がないと……このようなことは、とても繊細だからね。慎重に行わないといけない」
「で、ですが……」
「何か、悪いことを言ったかな」
両親という言葉を出され、イリアは急に表情が暗くなっていく。それは、ソラの悲しい過去が関係していたからだ。それに昨夜の父親とのやり取りを嫌でも思い出し、気分が重くなる。
でも、今はそのようなことを考えている暇はない。聞かれているのは、ソラの両親の話。イリアはユアンから視線を外すと、膝の上で手を組むと静かな声音で語るように話しはじめた。
何故、幼馴染の過去を話してしまうのだろう。
その時のイリアには、そのような気持ちは存在しなかった。ただ“尊敬できる人”という安易な考えで、ソラという存在を暴露していく。ユアンは他人であるが、イリアはソラに元気になってほしいという気持ちで彼に知る限りのことを話していく。勿論、其処に悪気はない。
「ソラには、両親はいません。幼い頃に両親が離婚して、父親に引き取られたと言っていました。でも、父親はソラが十歳の時に事故で死んでしまいました。それからずっとひとりぼっちで生活していて……とても寂しそう。でも、ソラは決して弱音を吐くことはしません」