エターナル・フロンティア~前編~
「そうだったのか。だから、両親の話をするのを嫌っていたのか。辛いことを話させてしまったね」
意外なソラの過去にユアンは驚きの表情を浮かべていたが、何処か別の一面も見え隠れする。それは五年前の実験で主任を務めていた男と同じもので、非道で冷たく科学者としての顔。だが俯いているイリアは、そんな彼の表情を知らない。それに、五年前の男の表情さえも――
「私が話したってことは、ソラには内緒にして下さい。どうせ、余計なことを……と、言うと思いますから」
「両親が離婚したと言っていたが、何か理由でもあったのかな? いや、これは個人的に気になってね」
「それは……話さないといけませんか?」
ユアンは詳しく聞き出そうと次々と質問を投げ掛けてくるが、イリアは躊躇う。いくら尊敬している人物の頼みだからといって、これ以上ソラの過去を勝手にベラベラと喋っていいものか。しかし、心の中では「相手は、尊敬している博士だから」と、迷いも生じてくる。
それ以前に「ソラの両親は、離婚をしている」という内容を話してしまっている。今更、話してはいけなかったと自問自答するのはおかしい。それに話したことで、いい方向へ行くことを期待してしまう。それにより迷いながらも、ユアンに更に詳しい情報を話していく。
「無理にとは言わない」
「……ラドック博士は能力の研究をしている方ですから、知っておいた方がいいですね。詳しくは知りませんが、理由としてソラが力を持っていたということです。どうしてそれが離婚の理由かは、話してくれません。無理に聞こうとしますと、怒ってしまいまして……」
「親の中には、力を持つ我が子を毛嫌いする者もいる。それによって捨てられ、孤児となる子供も多いと聞く。仕方がないと言えばそれまでだが、人が持つにはあまりにも強大な力。恐れる気持ちは、わからないわけでもない。それがこのような時代背景を生み出しているのは、間違いない」
「……酷い」
「理由のひとつに、彼等の出生率が問題かもしれない。能力者の出生が多いのなら、自然と理解は広まっていくだろう。だが数が少なければ、理解は広まらない。それに、人を殺傷する力。危険要素の方が大きい。力を持たない者にとっては、脅威となってしまう。僕達の研究は、そういう人たちに理解を得る為に行っている面もある。幼馴染の辛い話をしてくれたことに感謝する。君との約束は守る。それと、今度学会で研究の発表をすることになったのだが、できたら僕のアシスタントをやってくれないかな? 無理とは言わないが」