エターナル・フロンティア~前編~
「私が? いいのでしょうか」
「大丈夫だ。きっとできる」
「ラドック博士には、色々とお世話になっていますので……ですから私のような者で良ければ、お願いします」
「そうか。此方こそ、宜しく頼むよ」
「はい。一生懸命、頑張らせて頂きます。それと、ご迷惑にならないように勉強もいたします」
「それは、凄いね。しかし、無理はいけない。何より、卒業のことを考えないといけないから。それじゃあ、後日」
ユアンは「宜しく」という気持ちを込めてイリアの肩を軽く叩くと、彼は椅子から腰を上げる。そして違う科学者のもとへ向かうと、何やら真剣な表情で討論を繰り返す。それはイリアとのプライベートの会話ではなく研究に関することで、時折ユアンの眉間にシワが寄る。
それからわかることは「はじめから、当てにされていない」というものだろう。イリアは新人に近い立場なので、これだけは仕方がない。信頼を得たいのなら、実力を示すしかない。この研究所ではそれが当たり前で、全ては実力主義。よって学生気分は、捨てなければいけない。
(ソラが聞いたら、驚くわよね。でも、ソラのことを話したのは良かったのかしら。相手はラドック博士だし、大丈夫……よね。ラドック博士は、優しい方だもの。うん、大丈夫よ)
今となってユアンにソラの過去を話してしまったことに、後悔が生じる。しかし相手は信頼している博士で、尚且つ能力研究を行っている人物。それに何も知らないより知っていた方が、いい場合もある。そう自分に言言い聞かせると、イリアはディスプレーに向かい研究の続きを行なった。
ユアンは一通り研究を行っている者達に話し掛けると、何かを思い出したかのように部屋から出て行く。すると廊下には、二人の兵士が待機していた。ユアンの姿に彼等は敬礼し、何かを伝える。すると伝えられた内容に。先程の優しい笑顔ではなく歪んだ表情に変化していく。
「そうか……わかった。しかし、本当に罪深い人達だ。まあ、あの方達のご希望に添えるといいのだが。ふう……このようなことで疲れるとは、僕もまだまだのようだ。さて、そろそろ切り札を用意しないといけない。いつまでも、使われる側の身分でいたくないから……」
独り言のように発せられるユアンの言葉。だが、それを聞いている兵士達は眉ひとつ動かさない。彼等は、ユアンの裏側の性格を知っている。それに科学者はこのような生き物だと、割り切っている。だからいちいち反応を示すと疲れてしまうので、彼等は無表情を続けた。