エターナル・フロンティア~前編~
「……落ち着こうね」
「煩いわ」
恐る恐る声を掛けるも、反対にタツキに睨み返されてしまう。普段のタツキから想像できない姿に、ソラは言葉を詰まらせる。そして、一言「お好きにどうぞ」としか言えなかった。今のタツキは、誰も止められない。そして再び、全力疾走の追いかけっこがはじまるだろう。
流石に「捕まれば、何をされるかわからない」そんな気持ちがある子供は、半泣き状態でタツキから逃げ回る。子供相手にムキになるとは大人気ないが、一度火がついてしまうとこのようなもの。タツキの耳にはどのような言葉も入らず、ただ対象物を追いかけるのみ。
「オレ達は、二階に行こうか」
乱雑に置いてある荷物を避けて、ソラはマロンと一緒にキッチンがある二階に向かう。一階とは逆に生活スペースである二階は、掃除が行き届いている。ソラは窓の近くに置いてあるソファーに腰を下ろすと膝の上にマロンを乗せ、柔らかい身体を優しく撫でてやった。
「仕事をしなくていいのかな」
無論、患者はタツキが追いかけている子供だけではない。一階には診療待ちの患者が沢山残っているので、その者達を残して追いかけっことは医者としての立場を再認識してほしい。だが、タツキはひとつのことにとことん集中してしまう性格の持ち主。何を言っても無駄だった。
「さて、どのくらいで終わると思う? オレは、結構長い時間が掛かると思う。それが、タツキだ」
ソラは、膝の上に乗せたマロンに問う。するとマロンは首を傾げると、ポンと一回ソラの膝を叩いた。マロンの見解としては「十分で終わればいい方だ」ということらしく、どうやら完全に飼い主の性格を把握しているようだ。それにより、マロンは特に慌てる様子はない。
「偉いね。タツキも見習ってほしいものだよ。あのようにしていたら、子供に嫌われるよね」
と言いつつも、本人がどのような反応を見せるのかわからない。相変わらず外では追いかけっこが続けられており、待ちくたびれれた患者が数人帰っていく姿が見て取れた。この調子では、いずれ全員が帰ってしまうだろう。その前に、何としてでも追いかけっこをやめてもらわないといけない。
こうなると病気で待つ人々が、可哀想になってしまう。仕方ないとばかりにソラは窓を開くと、タツキに向かって大声で叫ぶ。彼の大声に、追いかけっこを繰り広げている二人の動きが止まった。そしてゆっくりとソラの方向へ視線を向けると、ソラからの言葉を待つ。