エターナル・フロンティア~前編~
「いい加減にしなよ。患者を待たせてどうする」
「忘れていたわ」
「タツキ」
「仕方ないでしょ」
その瞬間、一階から大きな溜息が聞こえた。「まさか、自分達を忘れていないだろう」そんな思いがあったらしく、タツキの一言は患者を落胆させるのに十分だった。もしかしたらこの台詞で次から来る患者の数が大幅に減少するかもしれない状況に、タツキは焦りだす。
患者のことを思い出したタツキは、慌てて建物の中に入る。一方、難を逃れた子供はそそくさと帰って行くが、次の来院は怪しい。それだけタツキに、相当なトラウマを植え付けられた。
「診察が終わるまで、オレは寝ているよ。マロンも、一緒に寝ようか。横に来て、いいから」
診療にどのくらい時間が掛かるかわからないソラは、ソファーに横になり休むことにした。腹の上にマロンを乗せ瞼を閉じると、疲れが溜まっていたらしく眠気はすぐに襲ってくる。寝息をたてるソラを覗き込むように見詰めるマロンは何を思ったのか腹の上から下りると、隣の部屋に向かう。
するとマロンが、大きい毛布を引っ張ってくる。外見から想像できないほどの力持ちのマロンは、毛布をソファーの横まで運んでいくとソラの腹の上に飛び乗る。その衝撃にソラは苦しそうに呻くと閉じていた瞳をゆっくりと開き、自分の身に起こった出来事を把握しようと視線を走らせる。
「どうしたんだ?」
ソラは腹の上でおかしな動きをしているマロンに声を掛ける視線を床に向けると、毛布を引っ張っているマロンの姿が目に飛び込んでくる。彼に風邪をひかせてはいけないという心遣いに、ソラは嬉しさを覚えたのだろうマロンの頭を撫で、利口な犬の優しさを褒める。
「飼い主に似ないで、偉いな」
いきなり撫でられたことに驚くマロンであったが、マロンはソラのことが好きなので嫌な素振りを見せることはない。そんなマロンはソラの腹の上で丸くなると、一緒に眠りに付くことにした。
一体、どれくらい休んでいたのか。階段を上る足音で、ソラは深い眠りから目を覚ます。彼は身体を起こし凝り固まった身体を解すように伸びをすると、やって来たタツキを出迎える。しかし目覚めたばかりなので視線は定まっておらず、全身が気だるく欠伸を何度もする。