エターナル・フロンティア~前編~
何事だと思い経営者の老夫婦も厨房から姿を現し、二人が座る席に急いで駆けつけて来る。ソラ達と老夫婦は、顔見知りだった。いや正確には、能力者達と顔見知りといっていい。老夫婦もまた能力者に偏見を持っていない数少ない存在なので、何でも話すことができた。
両者が顔見知りというのは能力者がこの店に来店し、話を聞いてもらうからだ。彼等の大半は、両親がいない。生まれたと同時に捨てられたり、両親が亡くなっていたりと様々。その為、老夫婦は優しい父と母のような存在だろう。ソラも時折訪れては、会話を楽しんでいる。
老夫婦はカディオから状況を聞くと、他の客達に心配しなくていいと告げていく。店主の説明に客達は何事もなかったかのように会話を再開し、楽しい会話を続ける。しかし、ある一角だけは違う。暗い雰囲気が、周囲を包み込む。それは、ソラの心の中を表していた。
床に膝をつき、俯くソラに優しく声を掛ける。それによりはじめてソラは老夫婦の存在に気付き、囁くような声音で迷惑を掛けてしまったことを謝った。その言葉に、決して老夫婦は責めようとはしない。これも器の大きさが関係しているのだろう、優しい表情がソラの心に染みる。
「まったく、世話を掛けるな」
「……御免」
「まあ、いいよ」
カディオは言葉ではそのように言っているが、何処か態とらしく肩を竦める。彼の言動に、ソラは悪いということを言葉に表す。いつもの彼であったら言い返しているが、今日はそのような気分ではない。拍子抜けしたカディオは椅子に座り直すと、フォークを握り料理を食べはじめた。
「愚痴を聞いてやると言った手前、聞いてやるよ。さあ、好きなだけ言いたまえ。何でも受け止めてやる」
「特に、愚痴はない」
「なら、飯を食わせてもらう」
「食欲は、旺盛だな」
「おう。此処の料理は、美味いからな」
「お前って、美味しい食事があれば問題ないって性格だよな。気楽っていうか、何て言うか……」
「人間、美味い飯があれば幸せになれる」
笑顔でお婆さんが、新しいスプーンとリゾットを持ってくる。ソラはテーブルに置かれたリゾットを見つめているが、決して手をつけようとはしない。その姿にカディオは何か言いたそうな感じだったが、食欲優先とばかりに皿に盛られた料理を次々と胃袋に入れていく。