エターナル・フロンティア~前編~
「カディオ、折角誘ってくれたのに済まない。オレ、帰るわ。それとさっきの話、忘れてくれ」
「待て。折角だから、食っていけ。これを残したら、作った者に悪いぞ。それに細い身体しているんだから、食える時に食っとけ。仕事の最中にぶっ倒れてみろ、後で何をされるかわからないぞ」
セットのサラダを食しながら、帰ろうとしているソラを引き止める。一瞬、その言葉に身体が止まり、確かにカディオの言い分にも一理あった。老夫婦に迷惑を掛け、尚且つ手作りの料理を食べようとはしない。流石に、このまま帰ってしまうと次からの入店はし辛い。
カディオの指摘に従い帰宅を諦めると、リゾットを食していく。口に運ばれる量は、少ない。見方によっては「上品な食べ方」となるだろうが、カディオに言わせれば「女のような食べ方」となる。男は、ワイルドに食べないといけない。それが、カディオの言い分だった。
「シッカリ食え!」
「食っているよ」
「男は、大食いだ」
「お前と一緒にするな」
ソラは、ここぞとばかりに毒を吐く。だがカディオは聞かないふりをすると、隣のテーブルで片付けを行っていたウエイターを呼び寄せると追加注文をする。メニュー表を開きあれやこれやと料理を頼む姿は金銭を全く考えていない、まさに食欲中心に物事を考えているといっていい。
「お、おい。まだ食うのか?」
「ふっ! 俺の胃袋は鉄でできている」
「自慢にはならない。太るぞ、確実に」
「その時は、その時だ」
「計画性がない」
「ダイエットなんて、女が考えるものだ」
「本当に、気楽でいいよ」
カディオは注文を終えると、残っていた料理を全て食べてしまう。テーブルの上に残ったのは、舐めるように食べて何も残っていない食器類。見事としか言いようのない食欲に、ソラは呆れるしかない。ふと何を思ったのか、少しだけ手を付けたリゾットをカディオの目の前に差し出す。
物欲しそうな目付きをしていたが、流石に人の食べ物は奪うということはしない。一応理性は存在するらしく、それを知ってソラはホッと胸を撫で下ろす。もしリゾットを奪い取っていたらカディオに対するイメージが変わってしまい、こうなるとただの食欲馬鹿である。