エターナル・フロンティア~前編~

 一方のカディオは鍵を開け車に乗り込むと、エンジンを掛ける。そして内蔵されているコンピュータに目的の場所を手馴れた手付きで打ち込むと窓を開き、ソラに声を掛けてくる。

「さっきの話だが、記憶なんて案外いい加減なものだ。時間が経てば、思いだすかもしれない。まあ嫌なことは、すぐに忘れてしまうんだけどな。何かあったら、俺に連絡をよろしく」

 彼の言葉にソラは、目を丸くしてしまう。カディオが、このようなことを言ってくるのは、過去一度としてない。それでも彼の精一杯の優しさにソラは「すまない」と、言葉を返す。

「暴力は、やめてほしいな」

「俺がいつそんなことをした」

「覚えていないんだ。それならいいよ」

「おいおい、最後まで言ってくれよ。気になるし。それに、俺は滅多に暴力は振るわない……はず」

「じゃあ、言わせてもらうよ。あれは、数日前の出来事だった。状況は、今日と同じだったかな」

 カディオの発言にソラは不満そうな表情を作ると、暴力を振るわれた日のことを語っていく。淡々と話される内容にカディオの顔が徐々に青褪めていくが、ソラは話を止めることはしない。

「思い出した?」

「わ、悪い」

「お前は、馬鹿力なんだから気をつけてくれよ」

 カデォオは猫のような瞳と長い耳を持つ〈セラフィム人〉と、身体能力の高い〈クリホォール人〉のハーフ。外見上はクリホォール人の血が強い為、ハーフと本人から聞かなければ其方の種族に見えてしまう。

 だが両方の種族の良いところが出ており、握力は右に出る者がいないほど高い数値を持つ。何よりリンゴも、片手で割れるほどだ。そのような人物が殴ったら……それはそれで恐ろしい。

「わかったよ」

「その言葉、信じるよ。じゃあ、オレは帰るから。その……今日は、楽しかった……有難う」

「おう。またな」

 カディオは車の中から手を振り、ソラは同じように手を上げそれに応えた。それに続くように、カディオの車が走り出したす。その姿を見送ると、ソラは脇に抱えていたヘルメットとグローブを身に付け家に向かいバイクを走らせると、冷たい風が服の隙間から入り込み気温以上に寒く感じられた。
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