エターナル・フロンティア~前編~
雪が降りそうな気候に、何気なく天を仰ぐ。繁華街は騒がしいほど賑やかであったが、数日後には一大イベントが控えているから仕方ない。〈ネヴェリルト〉直訳すると〈雪の妖精〉となるらしいが、この名前をつけた人物はファンタジーのセンスあるとソラは思っている。
また〈恋人達のひと時〉そういう別の呼び名もあった。ソラは何気なくバイクを止め、人の流れに視線を止める。この寒さならネヴェリルトの時は雪が降り、辺り一面銀世界になるに違いない。白銀の世界に、愛を語り合う恋人達。しかしソラにとっては、それは無縁の話。
(プレゼントは、せがまれるだろうな)
ソラは毎年、イリアにプレゼントを贈っている。“幼馴染”という理由で、ただ何となく。それに、プレゼントを贈る自体は嫌ではない。ただその行為は、変に誤解を招く場合がある。
「恋人を作ったのか」そのように言われたことは、何回かあった。何より、時期が悪すぎたりする。ネヴェリルトの日にプレゼントを贈る相手は、一般的に“恋人”と相場は決まっている。一昨年から別の日に贈ることにしているが、それが逆効果だとソラは気付いていない。
(今年は、何が良いのか……)
これといって、ソラは女性が喜ぶ物を知らない。適当に買いそれを贈っているのだが、イリアは何も言ってこないので一応気に入っているのだろう。はたまた、言わないだけなのか。
(今年は悪いから、どういうのが良いか聞くか)
だが、聞いたところで明確な回答を得ることができるのか。それとも逆に、高額な品物を要求されるのか。ふと、空港でのやり取りを思い出す。ネヴェリルトの時のプレゼントの他に、別の物も買わないといけなかった。イリアに、大量のプレゼントを贈る。正直、気が重かった。
痛過ぎる現実に溜息をつくとソラは、バイクを走らせ繁華街を抜けた。レストランから自宅までは相当の距離があったが、今日は運が良いのか雨に降られずに家に着くことができた。
ソラが暮らすアパートは、繁華街から離れた場所に建っている。アパートの周辺には人工的に植えられた木々を主体とした公園があり、人々が暮らすには最適な環境となっている。その公園の近くの駐車場にバイクを止めヘルメットを脱ぐと、白い蒸気が一気に立ち昇った。
それだけ、気温の差が激しいのだ。吐き出された白い息を眺めつつ、ソラは本格的な冬の到来に思いを馳せる。それは、故郷のことであった。今暮らしている場所のように、冬が厳しい場所。いや、故郷の方が雪深い。冬の訪れと同時に、当り一面が銀世界へと染まる。