エターナル・フロンティア~前編~
「誰だ」
ふと、鋭い気配を感じる。ソラは条件反射で戦闘態勢を取り周辺を注意深く観察するが、すぐに気配は消え静寂が戻った。一体、何だったのか――不穏な気配にソラは、妙に神経が過敏になりすぎているのに気付く。精神に堪える出来事が多過ぎるのだろう、昨日も今日も――
肩を竦めると、アパートの入り口に向かい歩き出す。部屋があるのは、五階建ての最上階。パスワードを打ち電子ロックを解除すると中に入れる構造で、ソラは手馴れた手つきでパスワードを打ち込みドアを開ける。その瞬間、密閉された空間に漂っていた空気が流れ出す。
部屋に入ると、明かりを点けずに真っ直ぐベッドがある部屋に向かった。無造作にヘルメットとリュックそしてグローブを床の上に置くと椅子を引き、テーブルに置いてあるパソコンの電源を入れメールのチェックをする。一件だけ、受信されていた。相手は、イリアだ。
内容は、例の卒論のことであった。
『やっぱり、卒論を手伝ってください。
とても大事な約束をしてしまいました。
それを叶えるために、ソラの協力が必要なの。
朝のことは、御免なさい。
でも、本当に重要なことなの』
「……まったく」
文章を読んだソラは両手で顔を覆い、考え込む。これは相変わらずのことであったが、別に嫌な思いはしない。いくら休暇中とはいえ、何か重要なことが起これば休暇は取り消しになる。
そしてすぐにその場所に出向き、任務を遂行しなければいけない。それだけソラが置かれている立場は束縛が多く、自由が制限されているといっていい。更に続きには、こう書かれていた。
『これは、私の一生がかかっています。
勿論、就職なども関係しています。
だから、できるなら断ることはしないでほしいです。卒業は普通にしたいと思っているから。
でも、それが難しいの。将来、科学者を目指すのが理由だと思うけど。
それでは、返事を待っています』