エターナル・フロンティア~前編~
「此方の都合も……」
ソラはテーブルの隅に置かれている写真立てに、視線を合わす。そこに映し出されているのは笑顔のソラとイリアの他、ソラの父親とイリアの両親。写真の下には自宅前と書かれており写した場所は確かイリアの自宅であったが、それは過去の思い出となってしまった。
写真の日付から、これを写したのは五歳の頃。ソラは父と共に惑星シルアを離れ、レミエルにやってきた時期だ。偶々隣の家に暮らしていたのが、ランフォード親子。この写真は両家族が出会った記念と、これから先仲良くやっていこうという願いから撮られた物であった。
だが、今はどうだろう。ソラの父親は死んでしまい、独りぼっちになってしまった。それにイリアの父親とは、あまり良い関係ではない。全てはこの力が関係し、力がなければ今頃は普通の生活を送っていた。
そして、母も一緒に――
外では雨が降り出し、雫が屋根から滴る音が耳に届く。雨音にソラはハッとなり、ベランダに出してある植木鉢を仕舞いに椅子から腰を上げる。窓を開けると、降りはじめの独特の香りが鼻腔を擽る。
丁寧に、植木鉢を部屋の中に入れていく。その時、その中のひとつが莟をつけていることに気付く。純白の花を咲かす〈スノーホワイト〉という名前がつけられた花。窓を閉め指定の場所に植木鉢を置くと、その小さい莟を観察する。何故かとても懐かしく思い、買ってしまった花だった。
ソラは植木鉢を持ちパソコンの前に座ると、それをテーブルの写真立ての前に置いた。物思いにその莟みを指で突いていると、幼い頃の自分がこの花を貰った相手に発した言葉を思い出す。
(確か、綺麗ですね……だっけ)
何かに怯え暮らしていた時に、見知らぬ人物がこれを持ってきた。それは今でも記憶の中に残り時々それを思い出すが、強くは思い出せない。すべては断片的で、おぼろげな記憶。思い出そうとすれば何かに阻まれ、記憶を手繰り寄せることができない。その時、何に怯えていたとのいうのか。
そして、何をそんなに怖がっていたというのか。それは、あの白い部屋を思い出してしまうからだ。全てが白に染まった牢獄のような空間で、其処に立つ人間も白い服を纏う。毎日同じ言葉を繰り返し、ソラをいう存在を何処かへ連れて行く。それに、どのような意味があったのか。
それから先は、思い出すことはできない。連れて行く者の顔も名前も――彼等は、何の目的で自分を連れて行くのだろうか。そして、何をしようとしていたのか。まるで悪夢の連鎖と呼べるもので、無理にその時の状況を思い出そうとすると激しい頭痛が襲い、阻んでくる。