エターナル・フロンティア~前編~
(思い出したくないという、拒絶反応か……)
そう心の中で呟いた後、急にキーボードを打ちはじめる。一通り文章が完成するとそのまま送信しようとしたが大切なことを思い出し、文章を二行追加することにした。「自分勝手に決めずに、相談しろ」簡単に説明すればそのような文であり、ソラの心情が表れていた。
メールを送信しパソコンの電源を落とす、熱くも冷たくもない暗闇が部屋の中を包み込む。それは窓の外から差し込む淡い光と交じり合い、ぼやけた印象を作り出す。それにより、今まで特に感じることのなかった激しいまでの孤独感に苛まれ、チクっと胸元が痛み出す。
ソラは倒れこむようにベッドに横になると首元を緩め、無意識に天井を見詰める。変わることのない冷たいそれは一日が無事に終わるということを告げ、生きているということを教えてくれた。
いつもであったらベッドに横になればすぐに眠気が襲ってくるというのに、今日に限って目が冴える。だが、どうせすぐに眠れると暫く天井を眺めていた。静かな空間に、雨音だけが響き渡る。その音を聞きながらソラは、眠気がやって来るのを静かに待ち続けていた。
その時、胸の周囲が焼き付くように締め付けられる。それは食べ過ぎて胸焼けを起したというものではなく、瞬時にその症状の訳を察知した。この症状はいつも前触れも無く起こり、自身を苦しめるもの。そして一旦症状が発症すれば、決して逃れることはできないものであった。
(もう、切れたのか……)
ベッドから起き上がるとキッチンに向かい棚からビンに入った錠剤を取り出すと、それを口に入れ水と共に胃に落す。暫くすれば薬の効果が見られるのだが、それ以前に妙な違和感を覚える。薬が普段のような効果を見せないのか、唇が乾きだし胸元がムカムカしてくる。
刹那、薬と食べ物が胃袋を逆流しだす。止まることなく繰り返される嘔吐は胃が空になっても続き、最終的には胃液さえも吐き出してしまう。ソラは力が入らない手でレバーを上げ、嘔吐物を流す。
吐き出した物の中に、血が混じっていたことに気付く。その時、脳裏にある人の台詞が思い出される。「お前は、これがなければ生きられない」という言葉を――ソラは思わず顔を顰めた。
(……煩い。オレは玩具じゃない)
笑い声と共に、あの人物はそのような言葉を言っていた。悔しくて仕方がなかったが、薬なしで生きていけないというのも現実であった。逃れることは決してできない状況に思わず毒付くと、ソラは瞼を硬く閉じ流れ出る冷たい水を被った。その冷たさに、頭が奥が疼く。