ロスト・クロニクル~前編~
それと同時に、無理に仕事を頼んだと後悔する。深夜に腹が減るということで、夜食を頼んだ。それにより、貴重な睡眠時間を奪ってしまった。一度後悔が脳裏に広がると、更に新しい後悔が広がっていく。その為、エイルは素直にマナにすまないことをしたと謝っていた。
「……エイル様」
「そうじゃないか」
「平気です。それに、夜食を作るくらいでしたら、掃除や洗濯に比べれば……いえ、手抜きはしていません」
「手抜きは、していないのはわかるよ。さっきも言った通りに、マナの料理は美味しかった」
「……有難うございます」
流石に二回も褒められると、恥ずかしさが先立ちエイルと視線を合わすことができなくなってしまう。俯き、モジモジとしている。それに夜食は仕事のひとつなので、褒められるのは一回でいい。それを二度もしてくれたエイルは「優しい」だけで、表現できない人物に発展する。
「マナ?」
「はい!」
俯いた顔を覗き込むように、エイルはマナの顔を見詰める。すると目の前にエイルの顔がいきなり現れたことに、身体を震わせ驚く。その影響で、手に持っていた皿を落としてしまう。
ガチャン。
地面へ滑り落ちる皿。乾いた音をたて、綺麗に真っ二つに割れてしまう。二人の間に、微妙な空気が漂う。そして一拍置いた後、マナは身体を震わせつつボロボロと大粒の涙を流し泣き出す。
「ど、どうしましょう」
「怪我は、ないよね」
「怪我より、お皿です」
「それは、どうでもいい」
「弁償……しませんと」
「だから、それはいいんだ。まずは、怪我をしているのかしていないかの方が大事。で、大丈夫」
「……はい」
皿を割り真っ先に怒られると思っていたマナであったが、エイルの必死な反応にどのように対応していいのか迷う。皿の代金は、給料から引いてもらおうと考えていた。無論、自分の意思で皿を割ったのではない。しかし皿を持っていたのはマナなので、そうしないといけない。