ロスト・クロニクル~前編~
皿の値段は、正直わからない。何ヶ月掛けても、割ってしまった皿の代金を支払っていこうと決意する。エイルは別にいいと言っているが、やはり弁償が重要だと結論を出す。そのことを必死に訴えていく。するとマナの意見に気分を悪くしたのか、エイルの表情が変化する。
「だから、それはいいって」
「で、ですが……」
「煩い」
そう言うと、エイルはマナの両方の頬を両方の指で摘み上げる。そして、伸ばしたり縮めたりと遊んでいく。相当強く摘まれているのか、マナの別の意味でボロボロと涙を流すのだった。
「皿はいい」
「そ、それでも……」
「まだ、言う」
「す、すみません」
とうとう、痛みに負けてしまう。マナは素直に詫びの言葉を言うと、離して欲しいと訴えていく。使用人の分際で雇い主の息子に物事を訴えていいものか迷うが、流石に摘まれている状態では辛い。それを聞き入れたエイルはマナを開放すると、もう言わないか聞いてくる。
「……はい」
「皿は、僕が割ったことにするよ」
「い、いけません!」
「何?」
間髪いれずに返ってきた言葉に、マナは身体を震わす。そう、エイルの形相に驚いたのだ。
自分が、全て悪い。
悪いからこそ、一人で片付ける。
誰かに、頼る訳にはいかない。
マナは素直に自身が抱いている感情を表面に出していたが、エイルは、それが気に入らなかった。彼の心情としては、自分を頼って欲しいと思っている。メイドという理由で、このように互いの間に線を引かれるのは嫌いであった。淡々とした口調で、それを語っていく。
「宜しいのですか?」
オズオズと尋ねるマナに、エイルは満面の笑みを浮かべる。これくらいの身代わりは、苦にならない。それにマナには、世話になっている。それのお礼と思って受け取ればいいと言うが、マナは困ったような表情を浮かべている。するとエイルは、交換条件を提示した。