ロスト・クロニクル~前編~

「あれは、一時期の迷いさ」

「迷いね。でも、あれは決定事項だから」

「そ、そんな!」

 どのように叫んだところで、これが覆されることはなかった。

 学園長が決定を下したということは、誰も異論を唱えることはできない。

 それにこのことに関しては、大勢が喜んだという。

 そして、愛する存在との別れが近付いた。


◇◆◇◆◇◆


 その後、正式な通達が下った。

 ラルフはフランソワーが国営生物研究所に連れて行かれるまでの数日間、最後のお世話とばかりに彼女の飼育に励んだらしい。

 いや、励んだつもりだったが、根に持つフランソワーがラルフ対しての噛み付きを止めなかったのは言うまでもない。

 日に日に増えていく噛み付きの跡。

 それでも飼育を放棄しなかったラルフは、偉いと言えた。

 しかしその怪我が影響で、ラルフは高熱で寝込むことになってしまう。

 フランソワーの置き土産というべきか、最悪なものを貰ったラルフはベッドで唸り続けた。

 そして、フランソワーの見送りはできなかったという。
< 49 / 607 >

この作品をシェア

pagetop