ロスト・クロニクル~前編~
「あれは、一時期の迷いさ」
「迷いね。でも、あれは決定事項だから」
「そ、そんな!」
どのように叫んだところで、これが覆されることはなかった。
学園長が決定を下したということは、誰も異論を唱えることはできない。
それにこのことに関しては、大勢が喜んだという。
そして、愛する存在との別れが近付いた。
◇◆◇◆◇◆
その後、正式な通達が下った。
ラルフはフランソワーが国営生物研究所に連れて行かれるまでの数日間、最後のお世話とばかりに彼女の飼育に励んだらしい。
いや、励んだつもりだったが、根に持つフランソワーがラルフ対しての噛み付きを止めなかったのは言うまでもない。
日に日に増えていく噛み付きの跡。
それでも飼育を放棄しなかったラルフは、偉いと言えた。
しかしその怪我が影響で、ラルフは高熱で寝込むことになってしまう。
フランソワーの置き土産というべきか、最悪なものを貰ったラルフはベッドで唸り続けた。
そして、フランソワーの見送りはできなかったという。