ロスト・クロニクル~前編~
「何で、このような物を――」
「四年になったというのに、ハーブの見分けが付かない方が問題あるよ。今まで何を勉強してきたのだ! って、怒られもするかもね。将来医者を目指すわけではないから、詳しく知らなくてもいいけど。それでも基本的なことを知らないと、次のテストは赤点を取るね」
エイルの台詞に続き、今度は大笑いが聞こえてきた。
どうやら違う生徒も、同じことをしてしまったようだ。次々と、担架で運ばれていく生徒達。
それと同時に、この授業の単位を落とした。
通常の授業より単位が大きいという理由は、この辺りが関係していた。
ただの合同授業で、単位が貰えると思ったら大きな間違い。
最初から舐めて掛かると痛い目に遭い、暫く校医の厄介になる。
無論その間、授業を受けることはできない。
その結果、複数の単位を落とす。
「地獄絵図」
「そうだね」
その他には、調合中に発生した怪しい紫の煙によって倒れる生徒がいた。
または鋭い刺を持つハーブに触れてしまい、そのまま気を失ってしまう生徒もいる。
そして一番の被害は、幻覚作用を持つハーブを食してしまった生徒だろう。
その場で不可思議な舞を演じ、人々を驚かす。
「勉強不足だよ」
「妙に、説得力のある言葉」
「本当のことだからね。テストに、簡単なものはないよ。やっぱりこれでいいんだ。ほら、見付けたぞ」
ポーションの材料となるハーブだと判明すると、葉の部分だけを手折りラルフに渡す。
見た目は、他のハーブと大して違いはない。
これで書かれている名前が違うと気付かなければ、間違うのは当たり前。
エイルがいなければ、今頃どうなっていたのか――素直に謝り、一緒に授業を受けてくれたことを心から感謝してしまう。
もし素直になっていなければ、他の生徒のように担架で運ばれていた。
現にラルフは、エイルより手渡されたハーブが本物なのか見分けがつかない。
「エイル、あれは?」
「うん? あれは、ハリス爺ちゃんの趣味だよ」
「ふーん」
ハーブ園の片隅に植えられていたのは、白い花弁が美しい山百合。
エイルの説明によると、庭師のハリスが丹精込めて育てている花らしい。
それは、山百合だけではなかった。
マーガレットにラベンダー。
季節を象徴する花々を咲かせ、多くの教師と生徒の目を楽しませている。