ロスト・クロニクル~前編~

「ほら、探して来い」

「エイルちゃんの意地悪」

「ほう、そう言うか」

「わかったよ。探してくる」

「早く終わらせたいから、急げよ」

「わかったよ」

「それと、道草禁止」

 指定された薬を短い時間の中で調合し提出すれば、それ相応の成績を獲得することができる。

 という基準は特に設けられていないのでゆっくりと行っていても良かったのだが、早めに課題をクリアし他の生徒を見学しつつ休みたいというのが、エイルの正直な気持ちであった。

 それに、ラルフと一緒にいる時間を短くしたい。

 エイルはそれほど、ラルフを毛嫌いしていた。

 ハーブを探しに行くラルフを横目に、エイルは調合を終えた生徒の様子を伺う。

 どうやらいくつかのペアは調合に成功し、合格を貰っている。

 しかし大半の生徒は、保健室に運ばれてしまった。

 今回の合同授業は、ある程度の波乱が予想されていたが、これほどリタイア組が出るとは――

 勉強不足の生徒の多さに、嘆くのは教師達。今回の授業内容は、日頃の復習のようなもの。

 それは、失敗せずに成功した生徒がいるのが何よりの証拠。

 それにこの授業は毎年行っているので、一種の年中行事のようなものだ。

 その為この時期になれば、勉強に身を入れるものだ。

 五年生に当たる生徒達も、同様なことを行った。

 その時はこのようなトラブルが発生したとは、聞いていない。

 それから考えると、問題はこの学年の生徒になる。

 やはり「勉強不足」が、一番の原因となるだろう。

 メルダースで怠けるとは、いい度胸としかいえない。

 いや、この場合は阿呆といえる。

 これくらいで失敗していると、五年への進級試験が危うい。

 進級試験は今回の合同授業の数倍は難しく、誰の手も借りることができない。

 つまり、不合格者は進級試験失敗のリスクも背負っていることになる。

 更なる勉強を――それが、不合格者へかけられる教師の言葉だった。

「エイル、見付けた」

「速っ! で、見せてみろ」

 エイルはラルフの手に握られているハーブを、本に描かれている挿絵と見比べながらチェックしていく。

 次の瞬間、問答無用のエイルの手刀攻撃が飛んできた。

 彼が繰り出した攻撃は見事にラルフの額に直撃し、どうやらかなり痛かったらしく、ちょっぴり涙を滲ませていた。


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