巡り合いの中で
セネリオが商品を購入してくれたことに、店員は嬉しさを隠し切れない。
店員の反応からしれ後で「クレイドが購入した――」という表示が、猫ちぐらの説明に付け加えられるだろう。
そのようなことを考えていると、セネリオは思わず吹き出してしまい店員を驚かせた。
「どうか……致しましたか」
「ちょっと……な」
「何か、ご不明な点でも……」
「いや、そういうことじゃない。勿論、君に不手際があったわけではないから、安心していい」
そのように言い店員を安心させると、猫ちぐらと一緒にアリエルが購入する全ての商品を一括で支払うと言う。
一括――という言葉に店員は一瞬、時間が停止してしまうが、セネリオは大金を稼いでいることは有名なので、一括くらい朝飯前。
店員はいそいそと会計に向かうと、他の店員に事情を説明していく。
次の瞬間、全員の表情が綻ぶ。
(わかり易い)
それが、セネリオの感想だった。
「アリエル」
「す、すみません。まだ……」
「それは構わない。何を見ているのか、気になった」
「洋服です」
「洋服?」
「この世界では、生き物に洋服を着せるのですね」
「あー、そういえば着せていたりするな」
「どの洋服も、可愛いです」
彼女にとってペット専用の洋服を見るのはこれがはじめてなので、瞳を輝かせながら見入る。
どれもが細かい部分まで丁寧に作られており、それに伴いそれ相応の値段であった。
アリエルは心のどこかでは「欲しい」と思っているようだが、やはり値段が値段なので見るだけで諦める。
「いいのか?」
「お値段が……」
「私が支払う」
セネリオの言葉に、アリエルは間髪いれずに否定する。
やはりあれこれ貰っている状況が引っ掛かるのだろう、このようなことばかりされては今後の生活面に関わってくるとキッパリ断る。
アリエルの決意にセネリオは何か言いたそうな雰囲気だったが、彼女の意志を尊重することにした。