不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
彼はなぜかすぐに答えてはくれなかった。

ほんの少し微笑んだかと思ったら、握り締めていた私の左手を自分の口もとに持っていく。

それから「はぁ……」と息を吹きかけた。かじかんだ指先にじわりと熱を感じる。


「手、冷たいね……」


私は改めて彼の顔をじっと見つめた。

居酒屋は照明が暗くてよくわからなかったけど、こうしてみると整ったキレイな顔立ちをしている思う。

ふわっと斜めに流した前髪。

その奥にある黒目がちの目は、ほんの少し目じりが下がっていてとても優しそうに見える。

素直に思う。
かっこいい人だなって。

ぼんやりと彼の顔に見とれていると、優しく引き寄せられ、私の体はすっぽりと彼の腕の中に収まった。

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