不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「体も冷えきってるし、震えてんじゃん」
「それは……」
彼の胸の中から、おずおずと顔を上げる。
だって、手が冷たいのも、体がガタガタと震えてるのも、寒さのせいだけじゃないから。
「卓巳君のせいだよ。私、緊張してるんだから……」
「へ?」
一瞬、目を丸くした卓巳君。
天を仰いで、「まいった……」とかなんとか、ブツブツ言っている。かと思ったら、いきなり私を抱え上げた。
「ちょ……ちょっと、なにすんの?」
いわゆるお姫様だっこをされ、彼の腕の中で足をばたつかせる。
そんな私にかまうことなく、卓巳君は歩き出す。
居酒屋での発言といい、ここでの行動といい、この人って、とんでもなくマイペースなんじゃないだろうか。