不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
マンションのエントランスを出て、駅へと続く道を眺める。

この道を歩くのも、きっとこれが最後。

そういえば、卓巳君のマンションからひとりで帰るのは初めてかもしれない。

卓巳君て、ああ見えて心配性なんだよね。

いつも、どんなに疲れてても必ず送ってくれた。駅まですぐの道のりなのに。


最後だったのに、伝えたかったことは、結局なにひとつ言えなかった。

はぁ……。

涙がこぼれそうになって、目尻をそっと拭った。誰にも顔を見られたくなくて、うつむいて歩きだそうとした時。

背後でマンションのエントランスドアが開く音がした。


「萌香ちゃん!」


聴きなれたその声に驚いて振り返ると、そこには卓巳君がいた。


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