不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
テーブルに戻ると、ちょうど沙耶がトイレから帰ってきたようだった。

お財布からお金を取り出して、沙耶に渡す。


「ごめん。もう先帰るね。優一君にも伝えといて」

「えっ? ちょ、萌香? どうしたの?」


驚く沙耶の声を背後に聞きながら、コートに袖を通す。


「なんでもない。沙耶は楽しんで」


それだけ言って、テーブルから離れた。


できる限り急いで店の出口に向かう。

もうヤダ、ほんとヤダ……。

脚はまだガクガクと震えている。

もっと早く歩きたいのに、足がもつれてうまく歩けない。

今にもこぼれそうな涙を懸命にこらえて、ドアの取っ手に手をかけた。


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