不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「うちに帰るっ。ウ・チ・ニ・カ・エ・ルだろ!」


さっき台本を持っていた男の子が、舞台袖から小声で卓巳君に伝えようとしている。

だけどマイクがその声を拾ったため、ホール中に響き渡ってしまった。

観客がクスクスと笑いだす。


「ボク、今日、うちに帰るよ」


卓巳君は慌ててセリフを続けた。


「ぷはっ。アイツ、マジおもしれー」


優一君はこらえきれず笑いだし、和美さんは首を振ってため息をついている。

私はひとり言みたいに小さく言う。


「でも、やっぱり自信ないよ。だって、卓巳君、そんな素振り、少しも見せてくれないんだもん。愛されてるなんて自信ない……」

「んー……」と少し考えこんでいた優一君は、ふいに私の肩に手を回した。

「じゃ、試してみよっか?」

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