不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「あ。オレ、覚えてる? あのコンパん時、萌香ちゃんの前に座ってたんだけど」

「うん。優一君だよね」


私の答えに、優一君が満足げに微笑む。


「つか、どうしたの? なんでここにいんの?」

「えっと……あの……」


どうしよう。
言い訳がなにも思い浮かばないよ。

アタフタする私の代わりに口を開いたのは、優一君のほうだった。


「あ、卓巳でしょ? 卓巳に用事でしょ?」

「え……」

「卓巳ならまだ研究室にいるよ。今日は泊まりらしいし」

「じゃ……あのっ、これっ。卓巳くんに渡してくれない?」


優一君から卓巳君に渡してもらえばいい。

そう思って、持っていた紙袋を差し出す。

だけど、そんな私の腕を優一君はぐいとひっぱった。


「自分で渡しなよ。卓巳の研究室まで連れていってあげるから」

「ええっ! そんなっ。邪魔しちゃ悪いし……」

「そうでもないよ。忙しいっつうか、あいつの場合、雑念多すぎて集中しないから、時間かかりすぎなんだよ」

「雑念?」

「あはは。まー色々とね」


なにがおかしいのか、優一君は楽しそうに笑った。


< 56 / 277 >

この作品をシェア

pagetop