Dead or Alive
「でもさ、林間ってやっぱ楽しみたいよね。ねーチナツ」
「うん、そうだね。つか高校って何するんだろう」
席が前後関係の辻村さんと海老原は会話を始めた。2人ともちゃっかり席に着いている。
私は未だ置いていなかった鞄を海老原の隣の自席に置くと、座って読書を開始することにした。

「モモちゃん何読んでるの?」
「ん?『人間失格』だよ」
絵を描きながら聞いてくる大峰さんに、私は振り向いて答えた。
というか何故描いている絵が私なんだ。
「『人間失格』って太宰治だよね?格好良いーっ、モモちゃん凄い!」
「太宰治が書いた作品ってさ、凄いよねぇ」

海老原が腕を組んでしみじみと言うと、大峰さんがきょとんとした顔で
「えっ、太宰治ってそんなすごいの?ボク『人間失格』しか知らないよ……?」
「それ寧ろ尊敬します。『走れメロス』とか知らない?」
「知らないよ!!」
「ちょ、ハルなにドヤ顔してるの?」

ドヤ顔をしている大峰さんを海老原が少し引いた目でみている。
辻村さんはそれを軽くスルーして大峰さんが描いている絵を見ていた。
ちなみにモデルは青柳さんだ。
「大峰ちゃんホント絵上手だよねー」
「まあね!!」

大峰さんが胸をそらしたそのとき、私達二年二組の担任である棚加雪弘(たなかゆきひろ)先生が入ってきた。
今日も黒いジャージが似合っていますね。

「おい学級委員、号令」
「きりーつ、きをつけー、れーい、おはよーござーまーす」
いつも思うんだけどさ、本当やる気ないよね号令。
棚加先生は気にしない様子で自身も小さな声で「おはようございます」と言うと、教卓の上のプリントをまとめ始めた。
メガネ、ずれてますよ。
「では今から、林間の班決めをして貰います」

その声に、教室中がざわめいた。
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